次の週、逗子海岸で朝から圭にウインドサーフィンを教えてもらっている千佳の姿がある。

この海岸は海に向かって大きな湾が開けており、午前中には山風が山から海に向かって強く吹き、午後からは逆に海風が山に向かって強く吹く。隣にはヨットとクルーザーがたくさん係留されている葉山マリーナが見え、沖にはウインドサーフィンを楽しむ人達が、カラフルなセールに風をいっぱい受け、縦横無尽に滑るように走り回っている。

その湾にある遠浅の海の中に立ち、圭が「いいぞ、いいぞ」と、大きな声を千佳にかけている。

千佳はボードの上に立ち、セールに風を受け、圭が立っているところまで進んでくる。千佳が大声を上げる。

「ゆっくりだけれど、圭のおかげでうまく進むことができたわ」

圭が褒める。

「千佳、うまいじゃないか。ここまで倒れずにセールを反転させて進んできたら、あとは練習を積めばドンドンうまくなるぞ。今度はそのまま沖に向かって進んでいけ」

その声を聞いて千佳は上手にセールを反転させ、ボードを沖に進めていく。ボードはゆっくりと沖に向かって進んでいき、百メートルほど沖に進んでいったところで、圭が大きな声で、「そのあたりで戻ってこい!」と叫ぶ。

すると千佳はそこでまたセールを反転させ、ボードは圭が立っているところまでまたゆっくりと戻ってくる。千佳が叫ぶ。

「うまく乗れたわ!」

千佳は圭のところで海に飛び込み、二人は笑顔でその日の練習を終えていた。

【前回の記事を読む】【小説】海でセクシーポーズをとるも…「おむつをした子供」