第一話 ペニシリン
「では皆さん。見ての通りマラサックの先から精子が漏れていないでしょ」
「その小さな袋に溜まるのか」
「そうです。これがあるから逆流しないし、マラが汚れないのですよ」
「なるほどー。便利なもんだなぁ」
「でしょう。これで瘡毒や淋病は無くなりますが、どうですか。マラサックは病気をうつされなくなるだけでなく、“ややこ”も出来なくなるのが、分かりますよね」
「うん、うん、うん、それで一回しか使えないのか」
「やってやれないことはないですけど……出来ればやらない方がいいですね」
「一回で捨てたらもったいないじゃないか」
「そうですけど……瘡毒が付着していると、次のお客様にうつしてしまいますからね」
「洗って乾かせばいいだろう」
「洗っただけでは落ちないのですよ」
「そうなのかぁ……」
「それに巻き直しているうちに、切れてしまう恐れがありますからね」
「それもあるかぁ……」
「宜しいですか」
「まぁ……いいだろう」
「それに避妊にもなるでしょ」
「確かに、和紙を中にいれて防ぐより、危険性は無しだなぁ」
「これで全部防げるのが分かるでしょ」
「いや、運が悪いと出来るかもなぁ」
「もし、出来たらどうするんですか。生まれたややこはどうするのですか」
「女なら禿にして花魁になる修業させるけど、男は下男として下働きさせるよ」
「そうなると、禿さんは病気を持って生まれてくるのですね」
「そうなるかな」
「なら、禿さんもペニシリンを打っておいた方がいいですね」
「そぅだな」