“でも、初めから女郎になる為に生まれて来たようなものだし……こんな地獄の中で生かしておくのも、不憫な気がするなぁ”
「では、殺す事はないのですね」
「病気や未熟児で死ぬことはあっても、俺たちはそこまでひどいことはやらないよ」
「そうですか」
「だんだん納得出来るようになってきたけど、そんな薄いものでちゃんと防げるのか」
「何万回も実験していますから。大見栄を切って太鼓判を押せます。それに精子が飛んできたぐらいでは、穴が開くことはないです」
「うぅん……」
「先に言った通り和紙だと、どぅしても隙間が出来るから、そこから漏れてしまうのですよ」
「これだと完全に防げるのか」
「まず、体の中で固い物に当たらない限り、穴が開いて漏れることはありません」
「固い物って何がある」
「骨ぐらいで、あとは何もないです」
「どうも信用出来ないな」
「今証明したでしょ。ねぇ。良く見ましたよね」
「そぅだったな。間違いないゃなぁ」
「何しろ、お客が病気を持ってなくても、お女郎さんが一人でも持っていて、一度でも接触したら、うつりますからね。そうしたら侍・商人・職人・どの職業の人も、瘡毒患者だらけになってしまいますよ。何度も言いますかが、お上から厳しい禁止令が出て、吉原は解体されてしまいますよ」
「そうかぁ……」
「ホントにそれだけで済めばいいですけど……」
「それはさっき聞いたよ」
「繰り返しますけど、これで瘡毒を蔓延させた罪で、一族郎党連帯責任になり、全員小塚原で打ち首になりますよ」
「そうだな。これを使えば安泰ということか」
「そうですよ」
「良く分かった」
「ありがとうございます」
「じや、明日だな」
「そうです。それと吉原の店主も全員お願いしますね」
「女郎は連れて来なくてもいいのか」
「まずは店主に納得してもらってからですよ。それで決まれば各店に行って、ペニシリンを打って来ます」
「分かった。で、明日でいいんだな」
「うん。あっ! 明後日にしてください」
「早い方がいいんじゃなかったのか」
「ペニシリンが効いて治っているのを見せたいので、比較的に三日ぐらいで効果が出ているお女郎さんの見本を見せた方が『百聞は一見に如かず』で、口で百回説明するより、分かりやすいでしょ」
「それもそうだな。なら三日後にするわ」
「お願いします」
「それと、花魁はいつやる」
「何人いましたっけ」
「俺の所は二人だな」
「花魁は毎日床入りするのですか」
「何度も足を運んで金を積む客でないと、そう簡単には床入りはしないよ」
「なら二人いっぺんにやりますか」
「それなら一日休めばいいんだな」
「そうですね」
「では、一番最後にしましょぅ」
「分かった」