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カシマレイコ……愛瞳は、伏見という刑事が言った言葉が、気になっていた。事件の捜査に都市伝説を持ち込むなんて、普通に考えれば正気とは思えない。しかも、それを言っているのは霊媒師などではなく、現役の刑事で、名刺には警部補と書かれている。
警部補で、見た目もちゃんとしていて、むしろ幽霊とか、そういったものを信じなさそうな雰囲気を持っている男が、親友が行方不明になってショックを受けている人間を前にして、大真面目にそんなことを言うとも思えない。実際、伏見は自分の趣味でそういうことを言っているわけじゃなく、それを質問するに値する何かを持っていて、だからこそ真剣に聞いてきたのだろう。
「けど、そんなことありえるの……?」
眉をひそめながらも、愛瞳はテーブルに置かれたノートパソコンの電源を入れて、ひとまず、カシマレイコという都市伝説について調べてみようと、ネットで検索してみた。すると、驚くほどたくさんの情報が出てきた。
「これが、カシマレイコの話……」
カシマさんとも言われる、その都市伝説は、日本兵のバージョンと、戦後、占領下の日本にいた女性のバージョンがあるようだ。伏見はカシマレイコと言っていたから、関係があるのは後者なのだろう。ネットにある内容を要約すると、だいたいこんな感じだ。
戦後、占領下の日本に、カシマレイコという美しい女性がいた。彼女は、占領軍として我が物顔だったアメリカの兵隊に強姦された上、銃で両手両足を撃たれ、一命は取り留めたものの、四肢を切断しなければならなくなった。自分の容姿にプライドを持っていた彼女は、その現実に耐えきれず、車椅子で外に出たときに、隙を見て電車の線路に飛び込み、自殺。
そして、カシマレイコが自殺してから一ヶ月ほど経ったころ。健康だった人間が、死因不明の変死体で発見されるという事件が頻発するようになった。変死した人間は、死亡した前日の夜に、奇妙な光を見たと言っていたという。
夜、光が現れ、翌日に変死体が発見される……馬鹿げた話に思えるが、事実として人が複数亡くなっており、ありえないでは済まされないことを理解した警察は、光を見た人は警察に連絡するようにと、住民に言った。やがて、光を見たという男が警察に来て、自分が見たものを話した。