【前回の記事を読む】部下の元気がない…リーダーがかけるべき“ある一言”とは?
第2章 リーダーシップと動機づけ面接を実装する
第1節 リーダーシップと動機づけ面接の実践的理解
4 「関わる」ときに意識するポイント
(2)受容
受容とは、相手の自律性と価値観を尊重することです。前節で述べたナラティブの存在を前提として、メンバーの見ている世界に対する理解を深めようとする姿勢ともいえます。受容のために心がけたいことが4つあります。
①正確な共感
相手の言葉を、その言葉の裏にある言葉になっていないものまで含めて理解し、相手に確認していくことです。私たちは、日常生活の中であいまいな表現を多用しています。そして、その意味を特に確認することもなく聞き流しています。そして、そこにもナラティブが潜んでいます。理解したつもり、聞いたつもり、伝えたつもりが、時として大きな誤解や問題につながっていきます。
例えば「もっときちんとしてくれないと困る」という発言。「きちんと」って何でしょうか。
主任「準備をきちんとしてとけと言ったじゃないか」
部下「ですから、きちんと準備したのですが……」
主任「だったら、どうなっているんだ。これは?」
部下「ですから、きちんとやったつもりなのですが、そこは考えていませんでした」
あなたの職場で、こんな会話が繰り返されていませんか?
「きちんと」というあいまい表現が、内容を確認されないまま使われたことが、この禅問答のようなやりとりの原因です。「わかったつもり」になって「空気を読む」ことが、多くの誤解を生みます。ここでは「あえて空気を読まず」に、丹念に相手の言葉を確認していく作業が必要です。
②絶対的価値
相手を、一人の人間として尊重する態度です。「あなたがそこにいるだけで価値がある」という、人間に対する絶対的信頼といってよいかもしれません。人間の価値は、その人の能力や地位によるものではないということ、当然のことかもしれませんが、実際の職場では、ついつい忘れられがちですね。
③是認
相手の強み、努力、良い意図を見出そうとする立場です。人間に絶対的価値を認めるのであれば、相手がそこにいること、それ自体を是認できます。「あなたが、いま生きて私の目の前にいることが、あなたが日々生き抜こうと努力していることの証」という是認は、どんな相手に対しても行えます。
④自律性の尊重
相手の選択に信頼を置くという考え方です。相手を、自己決定できる一人前の人間として認める態度ともいえます。いかなる問題であっても、相手の行動の選択権は相手にあります。その選択が、あなたにとって不都合なものであっても、自律性を持って選択した以上は、それを尊重しなければなりません。