【前回の記事を読む】日常での「ありがとう」「ごめんなさい」を大切に。それらの紡ぐ絆ポイント

「指導」「叱責」

「絆ポイント」を失うリスクがある言動の二つ目は、「指導」や「叱責」です。特に立場や経験、年齢などにおいて「上位者」とされる人が「下位者」といわれる人に対して発動する言動です。

基本的には、「正す」「叱る」といった内容になるので、相手にはネガティブに伝わることが多いもの。

ここで気をつけたいことは三つ。

まずは、「ダメなものはダメ」という確たる信念

そして、「本人が自覚している間違いや失策については、指導や叱責は逆効果」であるという現実

最後に、「一人称で正す」こと

です。

まずは「ダメなものはダメ」という信念。

何かのエラーが起きた時、そのタイミングを逃がすと、その相手は将来的に同じ過ちを犯す、ないしは誰からも何もいわれないまま、後ろ指を指され続けることになります。

行動分析学では「弱化子」や「嫌子(けんし)」とも呼ばれますが、何か間違ったことをした、やらなければいけないことをやらなかった時に「それはダメだ」という適切な「指導」や「叱責」が発動しないと、「そうか、何もいわれないな、これで良いんだな」という解釈をしてしまいます。結果、また同じ間違いや不履行を起こす、という悪循環に陥ります。

「ダメなものはダメ」。言われる側以上に言う側はストレスフルですが、勇気を持って正すこと。親、上司、先輩の大切な使命です。

特に、組織の「規律」を破ったメンバーで、その重大性を認識していない人には、確実に「指導」と「叱責」を発動しましょう。組織運営の根幹に関わる大切なポイントです。

次に「自覚し反省している人への叱責は逆効果」という点。

子供の頃、そろそろ宿題をやろうと思っていた矢先、お母さんから「宿題早くやりなさい!」と言われ「イマやろうと思っていたんだ、うるさいな!」と逆ギレした経験、多くの人がお持ちではないでしょうか(笑)。そんな少年・少女時代の記憶は、何歳になっても同じです。

社有車で事故を起こした、寝坊で遅刻した、財布をなくした、といった部下や子供を怒鳴りつけても、効果はほとんどない、と考えた方が良いでしょう。本人たちが一番その責を感じ、勝手に「大いなる反省」をしているでしょう。

裏を返せば、本人が自覚していない失策や、コトの軽重判断を誤っている、重大性の認識がない時は厳しく正すことも大切です。

「課長、ちょっと面倒な『客』から電話があって……」

と相談に来た部下に対して、

「『客』? 何だと? お前は誰に飯を食わしてもらっているんだ? お客様が毎月お支払い頂いている保険料から給料をもらい、家族を養っているんじゃないのか? 口の利き方を改めろ。『お客様』だろ、馬鹿者!」

という叱責は、「お客様本位」という観点が腹落ちしていない、若い社員には必要な指導です。

当人が自覚し、反省しているか、コトの軽重、重大性を正しく認識し、相応の受け止め方ができているか、見極めた上で最適な「指導」「叱責」を模索するようにしましょう。

大切な試合に負けたのに、ヘラヘラしている選手たちがいれば、何のために厳しい練習をしているのか、そもそも「勝つこと」に価値を見出しているのか、問い質すことも必要かもしれません。