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「ありがとう」=「感謝」「称賛」「労い」

お待たせしました。最後にやっと真打登場、「ありがとう」を筆頭にした「感謝」「称賛」「労い」です。「絆ポイント」を貯める、という観点での「ありがとう」は、『相手からもらう「ありがとう」』と、『自らの口から発する「ありがとう」』の二つに大別されます。

先に登場した「肯定」や「共感」と、自分が口にする「ありがとう」を同じカテゴリとします。対して、相手からもらう「ありがとう」には、本質的に大きな違いがあります。

「肯定」や「共感」は、相手の感情や意見など、何らかのアクションを受けたあと、いわば「リアクション」で「絆ポイント」を貯めるもの。同じく、自らが発する「ありがとう」は、他者からの何らかの行為や発言などのアクションに対して、感謝の意を言葉にしたもの。こちらもやはり「リアクション」で「絆ポイント」を貯めるものです。自ら何かを発言したり、アクションしたりすることなく、相手からの発言やアクションに対して、適切な「肯定」や「共感」、「感謝」の「リアクション」をするだけで、相手の心理的安全性は担保され、結果的にその人との「絆ポイント」は貯まります。

「肯定」や「共感」に比べ、自らが発する「ありがとう」は、同じカテゴリに属しているとはいえ、その効果は「心理的安全性」に留まらず、相手の「承認欲求」まで担保できることになり、それだけ貯まる「絆ポイント」は大きく増加します。「称賛」「労い」のコトバも同じく、「承認欲求」を担保し、「心理的安全性」を確実に担保してくれます。

また、自分の口から主体的に「ありがとう」を発すると、「ドーパミン」や「オキシトシン」といった様々な脳内ホルモンが分泌され、発した人自身に大きな幸福感をもたらすことが分かっており、「ありがとう」を言うことは、関係するすべての人に「プラス」の効果をもたらします。

では、相手から「ありがとう」をもらうこと。誰かから「ありがとう」を言ってもらえるシーンを思い浮かべてみましょう。「リアクション」で貯める、いわば「受け身」の「絆ポイント」ではなく、こちらから「ありがとう」をもらいにいく、仕掛けていく、能動的「絆ポイント」についてです。この一週間で誰かから「ありがとう」をもらえたシーンはありましたか? 繰り返しになりますが、「有難う」という漢字の成り立ちからも、そのシーンは貴重であることが分かります。「難しいことが有る」と書きますね。「めったにない」「めずらしい」という意味の「有難し」に由来します。「ありがとう」の反対語は、「ごめんなさい」ではなく、「当たり前」。それだけ、「ありがとう」を言うシーンも、言ってもらえるシーンも貴重だ、ということを示唆しています。

そして、「ありがとう」と、誰かから感謝される言動をするためには、「肯定」や「共感」をベースにして、相手のニーズに合わせた最適な支援や貢献が求められます。相手のニーズには、目に見えている=「顕在化」しているものと、相手がまだ意識できていない=「潜在化」しているものがあります。

・「事故現場に駆けつける」

・「急場をしのぐためのお金を貸す」

・「救急車を呼ぶ」

といった動きは、「顕在化」したニーズに応えたもので、もちろん「ありがとう」をもらえます。

これに対して、

・「もっとこうした方が効率的かもしれないよ」

・「支払いをカード一枚にまとめるとポイントが貯まるよ」

・「この薬はあまり使わない方が良いよ」

・「晩御飯は20時までにすませた方が痩せるよ」

といったアドバイスは、「潜在化」しているニーズに応えるものです。「潜在化」しているニーズは、一般的には「親切心」や「営業活動」などから掘り起こされ、普段は隠れているニーズです。こういったアドバイス活動でも「ありがとう」がもらえます。このようなたくさんの「ありがとう」を、より効果的に受け取るには、いくつかの「スキル=チカラ」が必要。次章で詳しく触れていきましょう。