【前回の記事を読む】「肯定することは種まき」人間関係が豊かになる農耕型社会とは

その人にとって大切なことを自分も大切にする

我々のメンバーの中で、こんなメンバーがいました。

そのメンバーのお父さんはゴルフ場で総支配人をされていたそうです。職業柄、コンペを企画する機会も多かった。コンペの度に景品のラインナップに頭を悩ませていたそうです。

そんな時、とあるコンペの優勝賞品として、地元の農家を応援するために買っていた「10kgのお米」を、参加者のご家族が喜ばれるかもしれないと思い用意したところ、見事優勝してそのお米をもらって帰った、クラブキャプテンの奥様が大変喜ばれた、と。

休みなのに家のこともロクに手伝わず、ゴルフで一日楽しんだという後ろめたさがあったキャプテンは、奥様の喜ぶ顔を見て、ホッと胸をなでおろしたそう。

もし、この時のコンペの優勝賞品が「ゼクシオのドライバー」(※)だった時……。想像してみましょう。

(※ダンロップ社製のゴルフのドライバー。大人気商品。)

表彰式でお酒も入り、ほんのり赤ら顔のキャプテンは、「ゼクシオのドライバー」を片手に帰宅します。奥様のリアクション……、想像したくないですね……。

下手したら「ゼクシオのドライバー」で叩かれるかもしれない(笑)。決してダンロップさんには罪はないので、ご容赦を。ゼクシオは疑いなく世紀の名器です。

このクラブキャプテンにとっては、愛しているのか、ただ恐いだけなのかは知りませんが、少なくとも奥様のことがとても大切だったということです。

ゴルフをしている人だからゴルフ用品が喜ばれるのか、というと必ずしもそうではない。その人が大切にすること、その人にとって大切な人のことを考え、最適な景品を用意するのがプロ。そうお父さんは言われたのです。

もちろんゴルフの参加者は千差万別。好みもバラバラです。「商品券」や「カタログギフト」が一番喜ばれるのは、そんな多様な好みにある程度応えることができるから、に他なりません。

そんな話を聞かされて育ったそのメンバーは社会人になってから、トラブルでお詫びに伺う際、相手方の家族構成や趣味、年齢など、可能な限り調べ、せっかくお渡しするならできるだけ喜んで頂けるお詫びの品を用意するようにしたそうです。ナントカの一つ覚えのように「菓子折り」を持参するのが必ずしも正解ではないのかもしれません。