六月十七日
来る日も来る日も雨だ。窓には灰色のびしょぬれの空しか無い。
「カラになったら退院するの…」
と云っては繰り返してかぞえる赤や黄の薬粒も、かぞえつくして服のむのもみるのもやになった。
同室の子なんぞ、かけぶとんを引きあげては、日に何度も泣く。今日もそうしてもぐっている時 こちらのベッドから声かける
「なによ…」
と涙と鼻でくちゃくちゃの顔が出た
「ねえ、あたしきれいでしょう?」
「うそ! やせっぽちのかみもじゃもじゃの鼻だけ真っ赤!」
「やっぱりチ、、ミには見えないか、愚かな娘よ あたしねさっきから雨だれに絹糸通してたの。ネックレスがいっぱい出来ちゃった。ひとつあげよう」
と、ぽいと投げるかっこうをしたら
「ちよちゃんのばか」
ととても嬉しそうに笑った。さては彼女もネックレス、首にかけるつもりだな。