五月一日
ゆうべ
みた
ゆめ
母様のゆめ
コットン
コットン
うば車
耳のそこで
コットン
コットン
母様が押す
私のうば車
コットン…
コットン…
この年頃の娘にとって親という存在は、近くにあると何故か反発したくなったりしていました。しかし、こうして遠くに離れていると、やたらに懐かしいのが父や母なのです。寝る前には毎夜、両親のために祈っていました。
五月二十日
「シスターガブリエラ…」
「いいえ! 神父様」
「シスターガブリエ…
「だ・め・で・すっ・」
ガブリエラ様は赤レンガの台所を独楽のように仂きまわります。そのあとを、神父様が、うろうろついてまわります。
ガブリエラ様はきのうの夕方、私達生徒のために甘いニマメを作っていました。その時通りかかった神父様を呼び止めて一粒味見をさせたのがいけなかったのです。
「お約束なさいますか。本当にこれっきりですよ」と三つぶ。ぷりぷりしたガブリエラ様。
「ハイ オヤクソクナサイマス」と両てのひらをそろえて恐縮し切った神父様。
今日は日よう日。日本語下手の神父様大苦心のお説教も無事に済んで晴着の村人達がさざめきながら散って行く、こみ合った廊下を全速力で、かき分けかき分け、台所に泳ぎついた神父様は花々しい式服もかなぐり脱いでハァハァ息を切らせながらニュッと手をのばして「オマメェ…」