【前回の記事を読む】まさか....医学生時代の小児科実習以来、三十九年ぶりの再会か...!?

便秘診療はドラマがいっぱい!

コロナの時代で小児科も受診患者さんの数が減っている中、これだけの受診があったということは、“北海道初”の子ども便秘専門診療であるということに加え、いかに多くの子どもたちとその家族が便秘に悩み、明解な治療を望んでいるかということを示していると思います。来院したお子さんたちの九割以上が他の病院で治療しても軽快しないお子さんたちであり、中には他院を四~五か所以上経て来られた方たちもいらっしゃいました。

こども便秘診療では毎回ドラマがあり、医師、看護師、検査技師は診療に終始するだけではありません。時には驚き、時には抱腹(ほうふく)絶倒(ぜっとう)、さらには涙したり、考えさせられたり……この後は少しだけそのドラマをお伝えできればと思います。

(プライバシー保護のため、名前や状況をいくつか変えたところがあります)

おじいちゃんが心配していた三歳のノンちゃん

ノンちゃんは旭川近郊の町から来ました。お母さんが熱心にわが子の便秘の経過を話し、泣き叫んでうんちする娘の苦しみと家族みんなの悲しみをお話ししています。ふと気になり、

「どうしてここに来ることになったの?」

と聞いてみました。お母さんはごそごそとカバンの中からしわしわの紙を取り出しました。

「この子のじいちゃんもずっとこの子の便秘を気にしていて、この前これを持ってきてくれました」

紙の(しわ)を広げ見ると、『道北の医療』のこども便秘診療の切り抜きでした! このように小さな子どもの苦しみは子ども一人の問題ではありません。親のみならず、兄弟や、おじいちゃん、おばあちゃんにまでその影響はおよぶのです。

別のお子さんのお母さんは、

「小学校の先生が北海道新聞に載った宮本先生の便秘記事を切り抜いて持ってきてくれました!」

と言ってくれました。子どもの便秘でも重症な症例は学校や保育園でも周辺を巻き込む大変さなのです。

病院が大嫌いだった四歳のマコト君

外来にお父さんと四歳のマコト君がやってきました。赤ちゃんの時から便秘がひどく四年間で三か所の病院をまわっているけれど一週間も便が出ないのは当たり前とのこと。お父さんの陰に隠れるようにおどおどした男の子で、各病院で浣腸をされたり、肛門に指を入れ便をほじられたり……で、病院が大嫌いな子でした。

「浣腸の〝か〟という声でも聞こうモノなら泣き叫び逃走します!」

と、お父さん。まずは下腹部から臍の上まで硬く触れる便の塊を出すところから治療が始まりました。数日かけてオリーブオイルを肛門から注入し便を軟らかくしてから、さらにオリーブオイル入りの浣腸を行い大人の(てのひら)山盛り二つ分ほどの硬い便(べん)(かい)をオムツに出しました。便の塊が腸につまることを便塞栓といいます(次ページ写真参照)。