4 ウイルスの発見
本題のウイルスの話を進めましょう。
[質問]「細菌より小さく普通の顕微鏡では、見ることのできないウイルスがどのようにして発見されたのですか」
(1)正体不明の濾過性病原体
昔から伝染病と知られている病気のなかには、天然痘、ハシカ(麻疹)、黄熱病、インフルエンザ、小児麻痺などがあり、それらは細菌学が発達した19世紀末になっても、その病原体が顕微鏡でも見つけられず細菌濾過器でも捕らえられないので、正体がまったく確認できないので、研究者たちが混迷していました。
この原因不明の病気の解明に糸口をつけてくれたのが、フランスの化学者で微生物学者でもあるパスツールでした。
彼は顕微鏡でも見ることのできない超小型で細菌より小さな超微生物がいると予言し、病人の体液などを培養して丹念に調べることを提言しました。この予言によって、細菌学者たちは、細菌より小さく猛烈な感染力のある正体不明の病原体を確かめようと懸命に研究を続けていました。
1892年にロシアの生物学者イワノフスキーは、タバコモザイク病の研究をしていて、この病原菌の正体を確かめようと、病葉を擦りつぶした液を素焼きの細菌濾過器にかけて調べたのですが、何としても病原菌はまったく見つけられませんでした。
だが、濾過器を通過した濾液を試しにタバコの葉に塗ってみたところ、細菌がいないはずの濾液によってタバコが発病したので、彼は驚いて何度も実験を繰り返してみました。
だが、同じように発病したので、多分、濾液には何らかの毒素が含まれているために枯れるのだろうと考えて、水で何倍にも希釈した濾液で再度実験を試みましたが、やはり発症したのです。