【前回の記事を読む】死んだ細胞と、生きている細胞…知られざる細菌とウイルスの違い
2 細菌の発見
(2) 細菌学の発達
1929年にイギリスの細菌学者フレミングが青カビ(グラム陽性細菌の放線菌門の一種のペニシリューム)から最初の抗生物質のペニシリンを発見して細菌感染症の治療薬として抗生物質治療時代の扉が開かれました。菌類から抗生物質が抽出されることが分かって、1944年にはアメリカの微生物学者ワクスマンによって、土壌の放線菌からストレプトマイシンを発見して有効な結核の治療薬になり多くの人が救われました。
その後、主に山野の土壌中の放線菌類から様々な抗生物質が抽出されたので、研究者たちが各地の土壌を集めて新たな抗生物質の発見につとめています。
細菌には感染する好みの組織や器官があり、ブドウ球菌は皮膚細胞に、肺炎球菌や結核菌は肺に感染し増殖するように臓器親和性があります。驚くことにウイルスにも、細菌のような好みの臓器に感染する性質の臓器親和性があり、インフルエンザウイルス、コロナウイルスなどは、呼吸器官の細胞に感染するのです。
微生物の菌類は、その種類が極めて多く巨大な生物群で、変異や交雑によって、次々に新種が生まれております。ウイルスも菌類に劣らず種類が多く、細菌以上に変異しやすく様々な新種が続々誕生して数百万種も存在しているといわれています。
カビや茸、粘菌など多くの菌類の中で、もっとも下等なものが細菌で、細菌の形は種類によって大きく異なり、球菌、棒状の桿菌、らせん状菌、鞭毛菌などがあり、鞭毛のある菌は運動が活発でその数から単毛菌、両毛菌、多数の鞭毛をもつ周毛菌があります。
一般的な細菌の大きさは、小さいもので約1~2μm で、大きいものでは8~10μm もあり、細菌濾過器で捕らえて光学顕微鏡で調べることができます。菌類の多くは、有機物を養分としてエネルギーを得ていますが、なかには、鉄バクテリア、硫黄バクテリアなどのように無機物の酸化エネルギーを利用して生きているものもいます。
細菌と総称するもののなかには、病原菌などの有害なものがある一方で、昔から発酵食品のチーズや酒、味噌、醤油の醸造に利用されてきた乳酸菌、酵母菌、納豆菌、麹菌などの善玉菌類があります。これらは強力で腐敗菌、病原菌などの悪玉菌の増殖を抑制したり殺菌するはたらきがあり、昔から、保存食の製造に利用されてきました。
現在、細菌学の研究分野は、変異株の検出、病原菌に対応するワクチン開発や抗生物質の発見、また、発酵食品としての有効で良質な菌の開発など多岐にわたっています。