3 細胞は生命体の基本単位なのか
[質問]
「細菌は1個の細胞だけで生きているし、つぼみを持った枝を花瓶にさしておくと根がないのに花が咲き、細胞だけが生きていることから生命の不思議さを感じます。これらの生命をどう解釈すればいいのですか。また、多細胞生物では、個体の生命と個体を構成する細胞の生命とは、どのような関係にあるのですか」
(1)生命とは
挿し木や接ぎ木など細胞の一部を使って、元の木と同じ遺伝子をもつ完全な個体がつくられるので、昔から挿し木によって同じ種類の樹木を数多く育ててきました。これは、いわゆる細胞から成体をつくるクローン技術で、組織の細胞を人工的に増殖して、同じ遺伝子をもつ個体をつくり出す手法なのです。
植物や下等動物では、組織の細胞塊から同じ遺伝子の個体をつくることが容易なのですが、哺乳類などの高等動物のクローンをつくることが難しかったのです。しかし、1997年に英国で羊の体細胞から同じ遺伝子をもつクローン羊「ドリー」を誕生しました。
その後、遺伝子工学が発達して、特定の遺伝子を大腸菌などで増殖させて同じ遺伝子のクローンをつくる技術が開発されたり、また、特定遺伝子を挿入した酵母菌などを遺伝子の運び屋(ベクター)として、生物の細胞に組み入れた遺伝子をもつクローン細胞がつくれるようになって、改めて生命の定義が問われることになっているのです。