四、妄想

お婆さん? あっ! 神様のお婆さんだ。見たことあると思ったら、そういうことか。

朝死んでいたということは、帰りに会ったお婆さんは、本当に神様が乗り移って現れたということか……。純一はおもむろにベッドから出ると、少し開けていた窓を静かに閉め、パジャマを着直し再びベッドに入った。色欲、性欲……。男にとってかけがえのないもの。

外国のとある詩人が言っていたな。「女がいなければ男は神のように生きられる」と。

わかるような気がするけど、神様ってあのお婆さんだろ……。四億あれば風俗で性欲は満たされるけど、僕は里美さんじゃなきゃ嫌だし、いつでも行けるとなると逆に行かないもんだ。お金があっても使い道がわからなくっちゃ……取りあえず貯金かな。

そもそも自分は幸せなお金持ちになれそうにない。一般人が急に大金をつかむとろくなことにならないらしい。知り合いにばれたらと思うと、気が気じゃない。

待てよ、里美さんには言わないとまずいよな。黙っていられるか? 無理だよな。優しい里美さんのことだ、半分くらいわけのわからない団体に寄付しちゃうかもしれない。

そうなったとき、僕は平静でいる自信は、ないな。それが原因で離婚になったら悲しいな……。

やめておこうかな、お金の願いごとは。しかし、やっぱり未来という不安は解消されるよなぁ……。それはすごく魅力だ。

悩む……悩む。