第2章 ナイスデイへの歩み
逆転の発想でナイスデイに変化の兆し
あることを契機に、雰囲気が変わってきたのです。不思議なことに、治癒的な集団にナイスデイは変わってきたのです。その変化の過程を簡単にまとめてみました。
2019年の3月ごろだったと思いますが、終礼の話を聞いていると、問題行動がどんどん報告されていました。誰と誰がケンカをした。不穏になって徘徊する人がいて困った。トイレで立った時にズボンを下ろす前に排尿されたので、濡れてしまった等々の問題提起がなされましたが、時間がないので、解決法を議論することもできずに毎回同じような問題提起が繰り返されていました。
こういった問題は考えてみれば、介護の世界では避けられないもので、表立って時間をかけて会議して取り組んでも解決困難と考えられるものばかりだったのです。
解決不可能と諦めるしかないのか、どうしたら良いのか、わからないままに、逆転の発想と言うか、とにかく利用者さまの問題点を指摘するのではなく、以前より良くなった点はないか、それを見つけて褒めるようにしたらどうかという考えが浮かびました。今日は以前より何が良くなったかを見つけ、それを褒めてあげるようにする。そして終礼に報告してもらうことにしたのです。
職員は当然のことながら驚き「本当の問題点に目をつぶり、黙っていよということか」と反論が来ました。「まあとにかくやってみよう」ということでお願いすることにしました。
2週間ばかり経ってから、終礼の記録を見ると問題点が少なくなっているのに気が付いたのです。主立った職員に「以前のような問題点も書く必要があるのでは」と言ったところ、何と「そういう問題はほとんどなくなってきた」という答えでした。まさかとさらに問い詰めようと言葉を探しました。思わず「信じられない」と言うと、「本当なのですよ」という返答でした。
正直あっけにとられた感じでした。その時はそういう良い状態が続くという確信は持てませんでした。何が起こっているか、全くわからなかったからです。