【前回の記事を読む】「ウンチまみれになっても」便所の汲み取りに誇りすら感じるワケ
薪割り(2012年4月)
こんな春が今まであっただろうか? 4月も下旬にさしかかっているというのに、未だに畑に雪がこんもりと残っている。
例年だと、どんなに遅くても4月上旬頃には、平地の畑から雪が溶け始め、グチャグチャはしているが作業を始められる。今年はまだ、春耕作業に全く手がついていない。例年より2週間以上遅れているし、これから雪解けが進んでも、ある程度畑の乾燥を待たなければならないから、まださらに1週間以上遅れることは必至だ。
牛もいなければ、ビニールハウスもない畑作専業の我が家は、まるまる1ヵ月の作業遅れとなり、気持ちばかりが焦るけれど相手がお天道様ではどうにもならんわけで……。畑仕事ができないので、今は仕方なしに薪割り作業を連日行っている。
毎年、3月下旬頃から薪を割りながら畑の雪解けを待ち、大抵1週間も経てば畑仕事を開始しているのだが、今年は待てども待てども畑は白いまま。3週間も薪を割り続けていたら、いいかげん肩も腰もコタコタにイカれてきた。割った量もハンパなくて薪倉は満杯。3年分ぐらいの薪をストックしてしまった。
でも実は、この薪割り作業、僕はわりと好きな仕事だ。小学生のころから、薪割りを手伝い始めたが、最初の頃はなかなか上手に割れなくてイライラしていた。薪割りにもコツがある。僕がヘタクソな薪割りをする度に、父や祖父から指導をうけたものだ。
「力だけじゃダメだ! 腰をいれて、マサカリはまっすぐ垂直に下ろせ」
「木目をよく見ろ! 木目に逆らわずに沿うように割れ」
「大きな株はいきなり真ん中から割ろうとしないで縁回りからそぎ取るように割れ」
などなどと何度も言われ続け、就農した頃からはいくらかまともに割れるようになっていた。
大地にしっかりと足をつけ、腰を落として踏ん張る。マサカリをもち、目の前にある株の木目を睨む。切り込む焦点を見定め、その焦点から目を離さずに、両腕をグイッと天に振りかざす。脳天の上に、垂直にマサカリの柄が伸びたところで、全神経を目の前の株にそそぐ。地球の重力に引っ張られるように、一気にマサカリをふり下ろす!
「パカーン!」
心地よい快音がそこらじゅうに響きわたり、株は真っ二つにきれいに割れる。薪割りのこの一連の流れと、きれいに割れた時の爽快感は、最高のエクスタシーだ。
最近は、北海道の農村部でも薪ストーブのない家が増えてきて、薪割り経験のない人もたくさんいる。もっとも、仕事が忙しくて薪を割るような暇などないかもしれない。でも、時には仕事の手を休めて、こんなスローライフを味わってみてはいかがだろう。
なにかとせわしくてストレスの多い現代人には、青空と新緑の下で、薪割りをすることが、いい心の薬になるかも? と自分自身に言い聞かせてはみるものの、正直、気休めにもならん。やっぱり焦るぜ(汗)。