この日調べていて最も重要だと分かったのは、転移である。がんが恐ろしいのは、がん細胞が転移していろいろな臓器でがん細胞が増えることだ。いろいろな臓器ががんに冒されれば死に至ることが分かってきた。逆に言えば、転移さえ起こさせなければまだ生きていられるかもしれないということだ。
日曜日は病院について調べてみた。がんに関係した病院でまず名前が出てきたのは東京にあるがんセンターであった。がんに詳しい医師が多く、研究もかなり進んでいるようだった。でも東京にあるので、静岡県の菊川市から行くには遠い。もっと近くでがんの専門の病院は静岡の県立のがんセンターであった。長泉町にあるとのことだった。
静岡県の西部に住んでいる私にとって東部の長泉町も遠く思えたが、新東名高速道路ができ、アクセス道路もあるようだったので、ドライブも趣味な私なら十分に行ける病院だと思った。
施設面で調べてみると、私が再検査をした隣の市にある医療センターもかなり充実していることが分かった。この病院は掛川市と袋井市が共同で運営しているユニークな病院であった。まだ完成したばかりで最新の機器を備えているとのことだった。近くにそんなにも良い病院があり、私はますます安心してきた。
この二日間でがんのことや病院のことが大分分かった。理解が深まると心は落ち着く。明日からはまた学校での授業を頑張っていこう。そういう気持ちになれた。
自分ががんであることは、管理職の校長、教頭、教務には伝えたが、他の人には伝えず、学校では前の週と同じように仕事をした。実際、体調は何の問題もなかった。心の面は、授業をしている時は冷静でいられたが、休み時間等はこれから先どうなるのだろうという不安な気持ちにたびたび襲われた。
学校で仕事をしていると落ち込む原因のほとんどは子どものことだが、また、元気にさせてくれるのも子どもたちである。
この週、あまり意識はしなかったが私は子どもたちに優しく接していた。子どもたちはそのような変化には敏感で明るく接してきた。いつも優しいと学校では秩序がなくなってしまう。筋の通った厳しさは必要で、そのことを意識しつつ優しくできるところは優しくしようと思ってずっと教師という仕事をしてきた。