【前回の記事を読む】【闘病実録】不安を乗り越えるのに大切なのは、原因を理解すること
手術前
二 決断
がんであることが分かってから自分の心は大きく成長した。そう自覚している。面白いことに、その変化がよく分かっているのが子どもたちであるように感じた。心の器の大きい者に憧れる。そういうことなのかもしれないと思った。この週は子どもたちと一緒にいるのが楽しく、かつ元気をもらった。そのようにして四日間を過ごし、いよいよCT検査の日を迎えた。
CT検査とは、コンピューター断層撮影法のことで、身体にX線を照射し、コンピューターで処理することにより、身体を輪切りにした断層写真が得られ、身体の内部の構造を詳しく調べられるというものだ。つまり、がんが転移しているかどうかが分かるという私にとってとても大切な検査であった。
検査が終わり、運命の転移があるかどうかの結果を聞きに消化器内科に戻った。今週も説明してくれたのは先週と同じ医師で、「胃のリンパ節に転移している疑いがありますが、肝臓、脾臓、膵臓、胆嚢には転移していません」といつもの明るい調子で言った。
続けて、「来週の二十五日の水曜日ですが、大腸の内視鏡検査を行います。検査が続いて大変ですが、この検査で終わりです。頑張ってください」と言ってくれた。
検査も本当に疲れるが、誰のためではなく自分のための検査なのだから、とにかく頑張ろうと思った。
大腸の内視鏡検査は想像以上に大変な検査であった。何が大変かというと、大腸に内視鏡を入れるためには大腸内の便を全て出してしまわなくてはいけないことだった。そのために下剤や腸管洗浄液を飲み、何回もトイレに行った。看護師に、「やっと腸内がきれいになりました」と言ってもらえた時は嬉しかった。
しかし、まだ苦しいことが待っていた。胃の検査で内視鏡には慣れてきていたが、大腸は初めてで、大腸内はカーブが多いので内視鏡もくねくね曲がるのが分かり、曲がる時は痛みと気持ち悪さが襲ってきた。病気には本当になるものではないと改めて思った。ただ、大腸にも転移はしていないことが分かり、かなりほっとした。
ほっとしている私に医師は、「今週の二十七日の金曜日に手術についての説明をします。今度は手術をする医師が説明するので、外科に行ってください」と言った。
激動の日々が続いていたが、ついに手術についての説明を聞く日になった。今まで家族にはあまり心配をかけたくなかったので、早期発見で大したことはないと言ってきたが、流石に手術についての説明ということで妻も一緒に来ていた。
沈着冷静そうな医師は、二人に向かって、説明用の内臓が描かれた紙を見せながら一気に話し始めた。
「もう聞いていると思いますが、胃の上部に進行がんがあります。このまま放置すると、腫瘍からの出血により貧血になります。また、腫瘍の進行により食べ物が食べられなくなります。そこで、開腹による手術を行います。今のところ胃は全部切除し、食道と小腸を特殊な機械を使って吻合します。周囲のリンパ節も切除します。ただし、最終的には開腹してみないと分からないことがあるので、術式に関しては我々に一任していただけるようにお願いします」