はじめに

平成二十七年(二〇一五年)九月十二日(土)。

戸隠登志夫は、また、伊豆を訪れた。今回は、久しぶりに泊まることにして、南端の下田まで来た。宿泊は太平洋が見える港の近くのホテルにしていた。食事の前に温泉に入ることにした。温泉に入ると、太平洋が見えた。

「あの日から二年か。まだ生きている」

西の海に沈みかけた太陽を見ながら、一人つぶやき、二年間に起こったことを思い出していた。

がんになったことは、本当に辛かった。しかし、今思い返してみると、それによって凄く成長できた。伊豆の大自然が自分を救ってくれたような気がする。また、伊豆の大自然の成り立ちを知ることで、関係するたくさんのことを調べ、人生というものについて深く考えることができた。この二年間の成長は凄い。有名なアスリートも言っていたが、自分で自分のことを褒めてあげたい気持ちであった。

今は、この海を見るだけでいろいろなことが分かる。この海の下にはフィリピン海プレートがあり、少しずつであるが北西に動いている。この伊豆半島その物が二千万年前は火山島であり、それがプレートとともに移動し、日本列島と衝突して半島となったのだ。だから伊豆半島は山ばかりである。今朝、東京を中心に地震があって、伊豆も揺れたが、それもプレートが関係しているのだ。

歴史にも詳しくなった。今日下田のホテルにした理由は、吉田松陰がこの下田で黒船に乗ろうとした場所に近いからである。多分あそこに見える所が、松陰が小舟で漕いでいった所であろう。テレビドラマでも放送したのでリアルに想像できる。歴史の多くが、ただ覚えているだけではなくて、生きている人間の活動として見えてきていた。

宇宙についての知識も広がった。今、太陽が西の海に沈みかけているが、太陽からの光は約八分かけて地球に届く。だから、今現在の本当にある太陽の位置は、もっと海に沈んでいる。今見えているのは八分前の光なのだ。地球にいると当然太陽が動いているように見えるが、もう知っていたことであるが、本当は地球が反時計回りで動いている。今はそれが実感できるようになってきた。

この二年間に、太陽の周りを二周したということも意識していた。春、夏、秋、冬に季節が変わる理由もよく分かる。この頃は地球が宇宙船のような気がしている。太陽が沈むにつれて星が出てきた。星の光は何年、いや何千年、何万年、何億年かかけて地球に届いている。光って見えるのは恒星や銀河で、地球のような惑星は、太陽系以外の物は見えない。宇宙全体の中では、地球はほんの小さな粒でしかない。そんな中で自分たちは生きているんだ。

伊豆の大自然の成り立ちを知り、その結果地球や宇宙のことを調べていく中で、私の永遠のテーマであった「人生・生きるとは」についても朧気ながら分かってきたことがあった。

私は、湯につかりながら、二年前のあの日からを思い出すことにした。