【前回の記事を読む】がん宣告を受け失意の最中…小学校教員が目にした「信じられない光景」
手術前
二 決断
その日の夜は、冷静になれたといってもやはりかなり興奮していたのでなかなか寝つけなかった。そこで、これからどうしたらいいのかを考えることにした。この時も教員生活で経験したことが役に立った。
落ち着かないクラスを何回か担当したことがある。落ち着かないクラスでだめだなーと思った瞬間にそのクラスを良くするのは難しくなってしまった。落ち着けないのには必ず原因がある。その原因を探すことでその対処法や指導法が見えてくる。原因が分かりその原因に応じた指導をすると驚くほどクラスの雰囲気は変わる。
病気も同じではないだろうか。がんは恐ろしい病気だが、がんとはどういう病気であるかを知ることがまずは大切だ。明日と明後日は休日で予定もない。二日間がんについていろいろ調べてみよう。そういう考えに落ち着くと自然に眠気も出てきて、いつの間にか眠ることができた。
次の日はいつもの休日以上に早く目覚め、充実した気分であった。今日はがんについて徹底的に調べてやる。命が関わっているからまさに死に物狂いである。そして、私は今の時代のありがたさを感じていた。今は、図書館に行かなくても家でインターネットを使えばかなりのことを調べることができる。
私は高齢ではあるが、学校ではパソコンの指導もしているので、インターネットを使って調べるのは得意であった。まず胃について調べていった。小学校の理科では胃は消化をする最も大切な器官として教えていた。
よく調べるともう一つ大切なことをしていることが分かった。それは食べた物を貯めておくということであった。だから一度にたくさんの物を食べても大丈夫なんだ。その胃がうまく働かなくなったら本当に恐ろしいと改めて思った。また、胃がんにはピロリ菌という物が関係していることが多いことが分かった。医師はピロリ菌については何も言わなかったので自分には関係ないのかもしれないとも思った。