(2) 細菌学の発達

その後、倍率の高い顕微鏡がつくられ、微生物の研究が盛んになり微生物の巧みな構造と増殖の仕方が次第に解明されました。

1876年にロベルト・コッホが、伝染病は細菌(バクテリア)という微生物の病原菌によって伝染することを立証し、炭疽(タンソ)病の病原菌を発見しました。

当時、多くの結核患者がおり、その原因究明が求められていました。コッホは、結核も細菌によって起こると信じ、患者の痰を培養して濾過器で捕らえたものを動物に与えて、実験によって伝染することを示し、結核は結核菌が原因であると発表して、結核に感染しているか否かを診断するツベルクリンの開発を提唱しました。

さらに、当時、大変恐れられていたコレラの病原菌も同様の手法で発見しました。この研究から多くの伝染病の原因は、細菌であることが分かり、細菌は、単細胞生物の中で最も小さな生き物として、その研究分野の細菌学が発達しました。

ロベルト・コッホは、ベルリン大学の細菌学教授で初代国立伝染病研究所長として多くの研究者を育て、破傷風菌を発見した北里柴三郎もドイツに留学してコッホに師事した一人なのです。

19世紀後半になって光学顕微鏡がさらに改良され、パスツールやコッホが育成した細菌学者たちが顕微鏡によって様々な病原菌を続々と発見し、伝染病は微細な細菌によって伝染し蔓延することが明確になりました。

だが、当時は感染力の強い結核などの伝染病に、これといった特効薬がなく、結核の感染拡大を防ぐため伝染病患者を隔離病棟に収容したり、空気のきれいな山間部に転地療養させたりして栄養のある物を食べ体力をつけて自然に治癒するのを待つだけで、患者の自力回復に頼っておりました。

結核は、働き盛りの若年層に多くの感染者がでたので社会問題になり、結核の特効薬や予防薬の開発が待望されていました。