終活
二人の大人への階段、第1段階はこのようにクリアした。それから二人は何度も第1段階を繰り返し練習した。
さて、次はどうするのか、きっと彼はアダルト雑誌か何かを買って勉強したに違いない。それは第1段階のテクニックがどんどん上達していったから、私は彼に練習台にされているようだった。
春、私たちは1学年上に進級した。彼18歳、私は17歳になった。
18歳になった彼は運転免許を取りに行った。家の軽トラックで私を迎えに来ては淀川の河川敷に行った。そこに車を止めて、車の中で第2段階の練習をすることにした。
「そんなことしたら、親に怒られる」
「こんなんでは妊娠せぇへんから……。ことりのこと好きやから、やらして」
イヤだと言ったら嫌われるのか、嫌われるのはイヤだ。親を裏切っているようで後ろめたさを感じながら、二人は第2段階もクリアしていった。
冬が来る頃、彼は推薦枠で大学に進学することが決まった。高校の卒業式から大学の入学式までの春休み中に彼は好きなスキーをするため一人で信州に行くことになった。
「何日くらい行くの?」
「さぁ、3週間くらいかな、楽しみや」
「あたし、寂しいな」
「3週間くらいすぐや、大阪駅まで送ってな。ことり、ちょっと茶室に行こ!」
彼は私の腕を掴み美術部の部室を出ると、夕方の薄暗い廊下を走り抜け、茶道部茶室に連れて行った。走っている途中に、夜間高校の学生が学食でパンや牛乳を買っている光景が見えた。
勝手知ったる他クラブの部室(茶室)に彼は堂々と入っていくと、中から鍵を閉めた。
「あのな、ことり、ここに横になってみ……」
私はとっさに察知した。彼が第3段階をやろうとしていることを……。
「あのねぇ、あたしねぇ、今日生理なんよ」
「だったら、ええやん、妊娠せえへんから」
二人は「妊娠」することを恐れ、第3段階を避けていた。
「あたし怖いわ。初めてやし、痛いっていうし……」
「俺は1回やったことがあるから大丈夫や」
「誰と?」
「いや、前に付き合っていた年上の女……」
何か、しどろもどろになっている。次第に外は暗くなり、真っ暗闇の中、茶室のガスストーブの明かりが二人のシルエットをオレンジ色に照らしていた。
「これでええんかな、ことり大丈夫か?」
「うん、痛いけど……」
初めての経験はこんな風に終わった。処女を失うと出血するらしいが、私の場合元々出血していたので、どれがどれか分からなかった。ただ、痛かったことだけは覚えている。