さらに16例追加しその効果は確定的となった。その後次々と症例を増やしていった。
阪大は薬剤開発能力はあっても、均一な条件を備えた多数の患者さんを用意できず、私共に依頼が来たわけである。大学病院その他大手病院も似たようなもので、患者数に乏しいうえ、毎回診察医を変えるようでは治験は出来ないわけである。治験は病院にとって元手がいらず厳格なデータを提供することで相当額の治験料が支払われる貴重な財源となった。
健診センター建設にかかっていた負担がこの治験によって救われたわけである。当院における中外製薬の治験成功を知り、アメリカのファイザー社よりエンブレル、ブリストルマイヤーズスクイブ社よりアバタセプトの治験と次々と治験の話が舞い込んだ。
MTXの効果に加え、Bioの効果が相乗され、患者の治療環境は劇的に変わった。このような治験はメーカーとの細やかな対応、患者への説明等が要求される。久師長を始め、担当者が見事に乗り切ってくれた。
関節リウマチは怖くない、初期でも進行していても治癒状態に導入できる時代の到来であった。
その後は患者の間に急速にそれらの認識が広まり、患者にとって最大のストレッサーであった手足の変形という恐怖が患者の間から拭われていった。即ち、ストレス―レス状態で患者自らが病気を軽くし治癒へと導くパターンへと変わっていった大きな転換点であった。
有史以来、関節リウマチはストレス病の代表であり、そのことは今も変わっていない。現在は治療コストが新たな問題=ストレッサーとなっている。最近はバイオシミラーが出現し既存薬の6~7割の値段まで下がってきた。今後が楽しみであるが薬剤費はそれでも患者にとって大きな問題である。
手の指が曲がった患者でも、完全寛解状態が続いていると自分がリウマチであるとの認識すら希薄となり、リウマチを悪化させるトリガー(ストレス)が働かない状態になっているのである。即ち恐怖心が消えているのである。