遂に二人は出会った。静十七歳・義経は二十六歳になっていた。静は若くして世の()(よう)を知っており、義経は今猶(いまなお)世情に疎く機微もわからない。

二年前、神泉苑での雨乞いで、静が如何に見事に舞い、雨を呼んだかを法皇は上機嫌で語った。

宴が終わって法皇が退室した後、

「お母様。私は九郎様のお館に伺ってみたいのですが」

「何を突然言い出すの。失礼ではありませんか」

「いや、御母堂、私がそう言ったのだ」

「それにしても、初めてお会いしたばかりでそのようなこと」

『できるはずがありません』という言葉は飲み込んだ。

『この堅い娘がそのような誘いに乗るなど普通は考えられない。この若者は、娘にしか見えないものを持っているのだろう。日頃、間違っても武門の女になってはいけないとうるさく言っておいたのだから』と磯禅師は頭を傾げた。

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