序文

持病のようにつきまとう肩こり、頭痛、腰痛に今までいろいろと手を尽くしてみたけれど、どれをやっても芳しくなく半分あきらめていた人が、読書用メガネを求めて眼鏡店に相談に行ったときに勧められた、遠視性乱視用のメガネを掛けて以来、持病と思っていた症状がほとんどなくなってしまった。

あるいは、それまで装用していたメガネが合っていないことが分かり、適正な度のレンズに替えたところ、日を経ずして持病だとばかり思っていた症状から解放されて、それ以降、仕事も勉強も大いにはかどるようになった。このような経験をお持ちの方は、少なくないのではないでしょうか。

眼に合わないメガネが疲労を起こすという話を耳にすることは決して珍しくないと思います。これと同時に、眼に合わないメガネを掛けたのと同様な状態の眼があること、そのような眼が起こす諸々の神経症状が、適切なメガネを掛けることによって改善してしまうということを書物という形にしてお伝えし、そして読者の皆様が健康的な生活を送れる様に、お役に立てることを念じて出版に至りました。

私たちの『眼因性疲労に関する研究』の成果を元にして、メガネを掛けることの効能と、より効果的なメガネライフを送る上での注意点を解説したのが、「第1部メガネの効用」です。

さらに私たちが研究していることをおよそ百年前に書籍にされている眼科医の存在があったことをお伝えすることも本書の大きな目的です。それは、専門性が高くなった現在の眼科治療、精神疾患治療、内科治療を総合的に見直すきっかけになると考えられるからです。私たちの研究と軌を一にするものと考えております。

その優れた著作はすでに廃盤となっておりましたが、この貴重な書物を再び世に示す必要性を感じたからこそ、それぞれの版元に了解を得て本作品において全文を掲載することが叶いました。かなり専門的な記述もありますので、随所に私の解説も入れておきました。それが「第2部『神経衰弱と眼』を読む」になります。

大正から昭和の初め頃までの一時期「眼科的処置による神経衰弱の治療」が世の中でブームとなった時があったそうです、その時代に目立った活躍をされたドクターにスポットを当て、眼と神経衰弱の関連性にさらに深く迫ってみたいと思います。それが「第3部眼性神経衰弱治療のパイオニアたち」です。