縦の糸、横の糸
3 音楽療法士との出会い……そして新しい歌が
病院のデイケアを続けながら、二〇一四年に、二男は伊勢のサポートステーションに行こうと言い出しました。伊勢は初めてです。担当の山路さんはこちらの状態を把握して丁寧に接してくれました。
帰郷当初にかつての思い出の地を訪れた際、二男はフリーズしたかのようになってしまったのですが、その場所での就労体験が入ってしまいました。気持ちの揺れを予想して事情を話したところ、作業療法士の藤井さんと同じように、危ないからやめるのではなく、クリアできるような助力をしてくれました。二男はサポステ終了後も山路さんに相談しました。
ジョブコーチの西川さんは、自身もバンドを組んで、さまざまな人たちと幅広く音楽交流をしています。西川さんが、二男を障がいを持つ人たちの音楽祭に誘ってくれました。音楽を聞きに行くのも大勢の中へ出るのも初めてのこと、私は、伊勢の高校へ通う甥っ子を誘って、二男の安心を増やしました。
障がいを持つ彼らの音楽は、奔放で自由です。「どうだったのかなあ……」と隣に座る二男を窺うと、アンケート用紙には「まるでジャングルに迷い込んだようでワクワクしました」と書いてあります。縦横無尽でありながら共鳴し合う音たちを、こう表現しました。
その時の指導者で中心的な運営者である音楽療法士、吉田さんとやがてつながっていきます。「ライブスペース勢の!」という、健常者も障がい者も、老いも若きも、上手下手も関係なく一堂に集まって音を楽しむ会を見に行くようになりました。西川さんや吉田さんが二男に声をかけてくれたのでしょう。二男は、椅子並べを手伝い、発表を見聞きしていきました。