第3章 現代政治の実態
平等ではないロシア
最近のロシアについて、下斗米伸夫著『ロシアの歴史を知るための50章』明石書店、2016に、「プーチンとメドヴェージェフが首相と大統領の地位を交換し合うことになったが、両者のポスト交換は[権力の私物化]と批判された」と記されている。
さらに、毎年数兆円ともいわれる収賄政治が行われているようでもあり、そのことを国外には隠し続けているらしい。
しかし、2015年サハリン州のアレクサンドル・ホロシャビン知事は、建設会社から560万ドル(約6億7千万円)を受け取った容疑で、2016年にはウリュカエフ経済発展相が収賄容疑で逮捕された。そして、2017年にメドヴェージェフ首相も知人の財閥が寄贈した別荘やヨット、ぶどう畑などを私物化していることを暴露されている。
その他、上級官僚たちの高級住宅が建ち並ぶ場所のあることなども一般に知られており、「権力者たちが贅沢な暮らしをして庶民は苦しみ」その格差が酷いと秘かに語られているらしい。
そしてロシア国内では依然として言論弾圧があり、これに対する反発も広がっているようである。2019年6月にモスクワ市幹部の汚職などを追及してきた記者が警察の捏造したとみられる事件で逮捕され、コメルサント、ベドモスチ、RBKの大手3紙は真相解明を求める異例の共同声明を掲載し、市内では無許可の抗議デモが行われていた。
なお、5月にはコメルサント紙で、政権寄りのオーナーとの対立から、政治部記者全員が辞職する事態も起きている。
年々規制を強化する権力側とメディアの攻防は続いているが、プーチン政権は世論調査にも圧力をかけ、5月26日に30.5%であった大統領の信頼度を、31日には72.3%と発表させている。
報道規制されるオーストラリア
2019年6月にオーストラリアではABC(放送局)や新聞記者の自宅などが警察の捜索を受けたこと(注1)について、ジャーナリスト自由連盟のピーター・グレスト氏は「次第に治安当局・国家権力が力をつけ独裁政権へ変わる恐れがある」と懸念し、「今回のような事態はオーストラリアに限らず今世界中で起きており、安全保障を理由にしたり関連の法律を強化したりしている。取材過程や国益のため情報を提供する人を守り報道機関の権利を保障する必要がある」と語っている。
共産主義系の国は、もともと党の独裁で報道の自由がなかったけれど、最近ではロシアなどだけでなく、資本主義系の国々でも首長の独善により<思想・言論の自由>が失われようとしているように感じられる。
2016年に来日し「言論・表現の自由」を調査した国連特別報告者デービッド・ケイも、安保法に関連する日本の「特定秘密保護法」で報道が萎縮(注2)していることを報告し、ケイ氏は放送法4条の廃止(注3)や、記者を処罰しないことなどを明文化するよう勧告したが、2019年になってもその勧告は履行されていないとする新たな報告書を提出している。
(注1)2019年6月9日に日本のNHKテレビ番組でも放送された。
(注2)望月衣塑子、M・ファクラー著『権力と新聞の大問題』集英社新書、2018参照
(注3)村上勝彦著『政治介入されるテレビ』青弓社、2014参照