副作用重篤度分類は体調の目安にもなる
がんはなぜ怖いのでしょうか? それはもちろん、場合によっては命を落とす病気だからです。
では、がんになると、どのような場合に命を落とすことになるかごぞんじですか? それは、肝臓、腎臓、骨髄、肺などの生命活動に欠かせない重要臓器の細胞が腫瘍によって物理的に圧迫されて、正常に機能できる細胞数が減って生命活動が維持できなくなるからです。
つまり、がんにかかっても、重要臓器が働かなくならないかぎり、命を落とすことはないのです。
極端な話、前立腺や乳腺などにがんができて直径何10cmと大きくなったとしても、生命活動に欠かせない肝臓、腎臓、骨髄、肺などの重要臓器が正常に機能していれば、命を落とすことはありません。腎臓であれば2つありますから、たとえ一方の腎臓にがんがあっても、もう1つの腎臓が正常に機能していれば命にかかわるような問題はないのです。
同じように、がんが転移したとしても、転移した臓器の機能が最低限の機能を保っていれば死ぬことはありません。
医師に「このまま放っておくと大変なことになりますよ!」と脅されたら、誰もが死を考えて悲観してしまいます。しかし、重要臓器がきちんと機能している間はまだ余裕があるのです。時間をかけて自分に合った治療法(代替療法や保険が効かない自由診療の医療も含めて)を探したり、セルフケアにじっくり取り組むことができます。
副作用重篤度分類は、生命の維持に必要な重要臓器が抗がん剤でどのくらい障害されているかを知る指標です。これを活用して、重要臓器の状態を自分自身でチェックしておくことが大切です。ただし、副作用重篤度分類に肺機能(酸素飽和度)の基準はありません。医学的見地から、
グレード1:95〜98%
グレード2:90〜94%
グレード3:90%未満
として判断してください。
こんなケースがありました。乳がんの患者さんが肝臓と骨に転移し、余命3か月と宣告されました。
ところが、血液検査の結果を副作用重篤度分類に当てはめてみると、骨髄、腎臓には全く異常なく、肝機能はγ-GTPだけがグレード1でそれ以外は正常でした。原発の腫瘍も大きさも変わっていません。これでなぜ余命3か月と判断したのか? 全く信じられません。この患者さんには理由を説明して、安心して抗がん剤治療とセルフケアに取り組んでもらっています。
執筆している時点ですでにまる1年が経過していますが、現在も治療中で原発腫瘍は6cmから3cmと小さくなり、腫瘍マーカーも下がって、元気に仕事へ復帰しています。
副作用重篤度分類を使えば、重要臓器の機能がどのくらい保たれているかを自分自身で把握することができますし、体調の目安にもなります。
副作用重篤度分類は厚生労働省が出しているエビデンス(科学的根拠)のある基準なので、医師からいくら否定的なコメントを投げかけられても、よけいな不安に惑わされず、治療やセルフケアに取り組んでほしいと思います。