日本の何が問題か
筆者が選挙に出た直接的な理由は、当時、本格的に進められようとした島根県と鳥取県にまたがる中海干拓事業に反対する人々に賛同して、推されて出ることにしました。この計画はまだ、お米が足りない時期(一九五〇年代)に計画されたものでしたが、米が余るようになり、一九七一年から本格的な減反政策が開始されたあとも進められていて(何段階かあり)、一九九六年が最後の最も金がかかる部分(数千億円)を着工するか、中止するかを決める時期でした。
農林水産省は米が余って農民に減反させながら、一方で減反開始から二五年も経っても土建業者の圧力で干拓を継続しようとしていました(同じような問題は諫早湾でも起きていて、これはその後、訴訟問題に発展し現在も決着がついていません)。
中海干拓問題だけでなく、同じ県内に国費を使った農業パイロット事業が数ヶ所あり(一ヶ所で二〇〇、三〇〇億円使っていました)、それを見学してみると事業後の土地がみんな山野に返っていました(開拓された牧場や畑地は荒れ果てていました)。農水省だけでなく、建設省やその他の省庁もそれぞれの名目で箱もの作りの公共事業に専念していました(バブルがはじけた後の景気対策として全国的に公共事業費が大幅に増加していた時期でした)。
これでは国はもたぬと私もその象徴的な意味で中海干拓反対に立つことにしました(筆者の当時の選挙ビラにはこのようなムダな公共投資によって国の借金は六〇〇兆円になっていると記し、公共事業ではなく次世代の人材─情報人材の育成に力を入れるべきだと記していました)。
ご存知のように、その後も国の借金のワニの口(歳出と税収の差)は開きっぱなしで二〇二一年は一一六六兆円で、GDPの二・二倍ぐらいになっていて、世界で断トツの借金大国になっています。新型コロナ関係はまだ、終わっていませんが、二〇二一年から二〇二二年にかけて、平年より一〇〇兆円ぐらい余分に追加されることになるでしょう。
国の財政問題の議論になりますと、政府も政治家も二%以上の経済成長があれば、すぐ借金は返されると言って(平成三〇年間一度も二%を超えるどころかゼロ成長、実質マイナス成長ですが)ワニの口を閉める努力は全くしていませんし、目途も立っていません(一度、民主党政権の時、財政削減の試みをしましたが、短命に終わりました。どの政権も財政削減は不評になるのでやろうとしないのです)。