「信じようとする素直な心をもっていただく、それだけじゃ。私が神だということ、すべてはそこから始まる。最初から信じないぞ、という心では願いごとは叶えられないし、私を見ることはもうないじゃろ。そう、願いごとは私を神と信じていただいた、ご褒美ということにしよう。そうなれば、私も気持ちよくこの国を去れるし、あなたも満足するじゃろう。そして、願いごとが叶ったときに私が神ということを確信する」
純一は、言いくるめられているような気がしたが別に嫌ではなかった。
(たしかにパンティは見えたし嫌いじゃない。でもそれだけで神と信じていいものか。もしかしたら、すべてがやらせかもしれない。でも、婆さんの前で足を止めたのは僕だしなぁ。まぁ、待てよ、仮にこのお婆さんを神と信じて害はあるか? ないよな。もしも信じるだけで本当に願いごとが叶ったら、こんなラッキーなことはないよな。――よしっ、どうせいつも時間はあるし、暇つぶしになるか)
純一は固い表情を解くと老婆に言った。
「信じますよ。お願いします、願いごとをひとつ」
「本当に信じているのか? まぁ、よい。それでは、次に会ったときまでに、願いを考えといてくださいよ」
「今度はいつ会えますか?」
「さあ、私も気まぐれなもんでな。でも大丈夫じゃ、神は約束を守る。約束は大事だからな。私を神と信じたら、必ず近いうちに会える。前回この国へ来たときも、サムライという人種の、名のある一人の願いごとをちゃんと叶えてやったしのぉ。サムライというのは、変わった奴が多かったなぁ」
「サムライ? 一体、どんな願いごとですか?」
「どんな? 彼の願いごとは難しくて悩んだ。出会ったときは子どもだったが、鷹のような鋭い目をしたいい面構えだった。表情に生気があふれていたよ。今のあなたたちとは比べものにならない」
「面目ない次第で」
「彼は天下を取りたいと言った」
「天下! ですか?」
「それだけなら願いを叶えてやらなかったかもしれないが、彼は天下を取って人々を笑わせたいと、本気で思っていたわ。いい顔だったなぁ」