「明後日から一週間の秋休みを挟んで、二十一日の後期始業式で私たち前期役員の解任式と、後期役員の就任式があります。そこで正式に、皆さんは二〇〇二年度後期生徒会役員となります!」

先輩たちがにこにこと拍手をする。

「しかしまあ、メンバーみんな男ってのも珍しいねぇ」

西田先輩は笑って続けた。

「男だけでも楽しいんじゃない? がんばって! 期待してるよ」

先輩たちは引継ぎ資料を渡すと、生徒会室をあとにした。

「はあああん、緊張した〜」

ん? 俺は、この場の誰からも想像できない、なよなよっとした声の方へ顔を向ける。声の主は岩崎だった。第一印象と違いすぎる。さっきまでのきりっとした(たたず)まいはなんだったんだ! 

「だいちゃん分かるー。ボクも緊張したー」

越智は岩崎のキャラを何事もなかったかのように受け止めている。さっそくだいちゃんてのも()れ馴れしい。どこからツッコめばいいんだよ。

「ぼくの名前ご存じなんですか?」

「演説聞いたんだから当然だよー。もし当選できたら、どんな子たちと一緒に活動していくのかなあってわくわくして、みーんな覚えちゃった!」

こっちは全員敵だと思って戦っていたっていうのに。生徒会は、友だち作る場所じゃない! こんなやつが副会長? 任せられるか。

岩崎が両手でほころぶ口元を押さえる。

「越智センパイみたいな有名人に覚えていただけるなんて、また緊張しちゃいます」

「ボクのこと、知ってるの?」

「もちろんです! 読んでますよ、雑誌『るんるん町歩き』。本物にお会いできるなんて光栄です〜」

越智が慣れた様子でぱっと両手を差し出す。岩崎はその手を取って、ぎゅっと握手した。越智は手を握ったまま、岩崎に上目遣いをする。

「だいちゃん、大きいねー。うらやましい」

やりとりする二人を横目で見て、俺は越智よりはでかいと思うことで心を落ち着けた。クラスなど背の順で並ぶとかなりの頻度で腰に手を当てる、先頭の不名誉な特権を手にする俺だが、これからまだまだ伸びて、この中の誰よりもでかくなってやる。

「君も大きいよねー」

越智は、乱れた服装が鼻につく野間を見上げた。あいつ、足長っ。

「足も長いねんなぁ」

土居のさらっとした指摘に、心が読まれたかと思い、汗が()き出す。

「気にすんなよ」

優哉の半笑いのささやきに、もう一度汗をかく。

「き、気にしてねえよっ」

足の長さに悩んでいるなんて、会長としてどうなんだよ。

【前回の記事を読む】【小説】生徒会役員に当選した生徒たちが見せた「意外な素顔」