生徒総会

俺の怒りを知ってか知らずかリカちゃんは、「生徒総会の日程は大丈夫よね?」とイエス以外の答えを求めていない聞き方で、尋ねた。

「せーとそーかい?」

越智、土居、岩崎が声を揃える。野間は黙って目だけリカちゃんに向け、優哉は腕を組んで小さなため息をついた。

「Oh, my god……」

リカちゃんは海外ドラマのように両手を広げた。俺も神に救いを求めたい。壁にかかったカレンダーの十一月六日に、リカちゃんが『生徒総会』と書き込む。俺は、怒りで震えながら声を絞り出した。

「生徒総会は五月にもあっただろう」

越智と土居は目を合わせ、首をちょこっとかしげる。

「生徒会だけで、学校のことを勝手に決めているわけじゃない。生徒と意見や質問を交わし合い、よりよい学校づくりに励む、それが生徒総会だ」

なぜ、生徒会役員に生徒総会を説明しなきゃならないんだ。この役員たちとまだ二回しか顔を合わせていないのに、ずっとイライラしている。岩崎がおずおずと手を挙げる。

「五月の総会、なんとなく思い出しました。でも質問とか意見とか出てましたっけ」

今、一番聞きたくない言葉だった。出ない、意見なんか。ここにいる生徒会役員すら知らない生徒総会に、生徒が関心を持つわけがない。ステージに上がるとすぐに分かるが、寝ている生徒があちこちにいる。総会とは名ばかりで、提案も報告も、役員からの一方的な発信だけだ。俺がむすっと黙っているので、優哉が口を開いた。

「総会に参加しやすい雰囲気を作るのも、生徒会の役割でないかな」

「おもろそうやな! みんなが参加できる生徒総会! 親睦会でもするか?」

土居がパシっと膝ひざを叩くと「いいね」と越智と岩崎が身を乗り出す。なんだよ、親睦会って。

「十一月は、前期役員による活動報告。俺と中川は報告があるけれど、あとの役員は議事だ」

俺の言葉に「なんだぁ、つまんなぁい」と越智たち三人が座り直した。ここにいるやつらは本当に選ばれた生徒会役員なのか? ここは生徒会室なのか? リカちゃんは腕時計にちらりと視線を落として、「秋のボランティアも忘れないでね」と言い置き、風のように去って行った。

「さっそくあるんだ。赤い羽根の募金だっけ?」

違う、越智、それは二月。道枝中のボランティア参加率はとにかく低い。毎年お馴染みの、後期の初めに行うこの活動は、特に。

「まずは落ち葉清掃だ」

「落ち葉せいそー? そんなことまで生徒会でするんか」

土居がひっくり返った。道枝中は正門から靴箱までイチョウ並木があり、秋には落ち葉だけでなく、ぎんなんも落ちてくる。

「十一月十八日からの一週間は地域の挨拶週間にも当たるから、校門で掃除しながら挨拶運動も行う。それに伴って、一緒に掃除してくれる人を募る」

俺の説明の間、どんどん猫背になっていった越智が呟く。

「なんか生徒会って……」

土居が続ける。

「地味やな」