【前回の記事を読む】「緊張しながらヤクザのもとに訪れた私…取り出した衝撃の物とは

第三章 兄弟分

沈黙が続き、おもむろに伊達さんが口を開いた。

「ようある話で、肝心の女が、『この男と絶対離れへん』と、言うたら、そのときはどないしょうもないでなぁ」

しまった! 先に清子の意思を確かめておくべきだった。軽々に動いたことをまた後悔したが遅きに失した。

「それから、オマエらに言うとったるけどな、ヤクザはしょせん人の弱みにつけ込むのが仕事やから、簡単にヤクザとは付き合うな、付き合うて得になることは一切ない。覚えとけよ」

どういうこと? 意味ワカメだ。二、三十分は過ぎただろうか、裏口から奥の部屋を通って、ドタドタと浅井と数人の若い衆が入ってきた。

もう一人の浅井の連れのヤクザはいなかった。

「ここに座れ」

伊達さんは神妙な浅井を横に座らせ、他の若い衆を部屋から出した。そして手を伸ばし、委縮した浅井の肩を引き寄せながら、「なぁ浅井、何があったか知らんけど、コイツらはワシの一番下の弟のとこの若いもんや。団は団でも応援団のな」と、冗談を言ったが、誰も笑えなかった。

浅井は項垂れながら、テーブルの上に置かれた自分のナイフをじっと見つめていた。

あちゃー、なんでこいつらがここにおるんや、えらいことになってしもた。次第によってはエンコが飛ぶかもしれん―。

そんな浅井の声が聞こえてきそうな表情をしていた。

「オマエの忘れもんやいうて、ここに持ってきてくれとる。まぁ先に礼ぐらい言え」

浅井は伊達さんの腹が読めずに躊ちゅう躇ちょしながら、ペコッと頭だけ下げた。