バタバタと足音がし、戸が勢いよく開く。
「生徒会役員会計に就任いたしました! 土居健志郎です!」
どこか訛(なまり)のあるでかい声と共にずかずかと入ってきたのは、坊主頭が印象的な男だった。
「お! バク宙の子!」
稲葉前会計担当がパシンと手を叩いて指さす。
思い出した。演説冒頭でいきなりバク宙を披露したかと思えば、やたら笑いを取っていた。こんなやつに優哉は負けたのか。
「土居くん、よろしく。会計監査、二年C組の中川です」
優哉が土居に手を差し出す。
「あんた、めっちゃ賢そうやな。頼りにしてんでぇ」
土居はがしがしと優哉と握手を交わした。 なんで上から目線なんだ。なんで優哉もにこにこ余裕かましているんだ。悔しくないのかよ。
態度も図々しい。生徒会でなければこんなやつ、絶対関わりたくない!
イライラする俺の横を、前会計監査の宮内(みやうち)先輩が、おさげ髪を揺らして通った。あ、シャンプーのいいにおい。
宮内先輩は戸口の陰から誰かを引き寄せた。
「うれしい! 吹奏楽部の後輩から役員が出てくれて!」
宮内先輩の頭一つよりもっと高いところから、顔が覗いた。でかいっ!
候補者の中で一番背が高くて、目立っていたやつ。笑顔が爽やかで、演説もおもしろかったな。
ジョークじゃなくて、インタレスティングなおもしろさ。偉人の名言なんか挟んだりして。この当選は納得。
「一年A組、岩崎大吾です。よろしくお願いします」 はきはきした声がよく響く。なんだ、まともなのもいるじゃないか。部活も宮内先輩の後輩みたいだし、きっと悪いやつじゃないだろう。