【前回の記事を読む】君が代・日の丸…教員たちが「起立しなかった」意外な理由とは
卒業式と教員の服務事故⑶ ~副校長2年目の卒業式~
さて、副校長として迎えた2度目の卒業式。式当日を迎えるまでの職員団体との激しい交渉、職場に漂う重たい空気、全く気の抜けない状況下で、不測の事態も鑑み、都教委の指導主事や全日制副校長にも応援要請し、万全の態勢を敷いて臨んだ。
しかし、不安は的中し、式が始まり国歌斉唱に移ると、途中からスーッと着席する教員が出たのである。案の定、不起立者が……。式後直ちに、校長室に当該教諭を呼んで事情聴取を行った。
当人は意外にも冷静で、意図的に不起立を行ったとのことであった。そして、校長の経営方針が意に沿わず、“不起立”という形で反旗を翻したようであった。
ほんの一瞬の出来事ではあったが、事後処理の対応に費やした膨大な時間とその労力たるや、計り知れないものがあった。このような非生産的なことにエネルギーを消耗することに虚しさを感じた。
そして、事故報告書を作成しながら、「こんなことをするために管理職の道に進んだんじゃない」と、大声で叫びたくなる自分がいた。
卒業式と教員の服務事故⑷ ~副校長3年目の卒業式~
当該校において、3度目の卒業式を迎えた。校長も、私も、さすがに今年はもうないだろうと高をくくっていた。そして、校長の方から「今日、式が終わったら、飲みに行くぞ!」とお声掛けもあった。私も「わかりました!」と明るく返答した。
”ところが”、である。式が終わってみれば、またしても不起立者が出てしまった。それが、最も信頼していた中堅教員であった。
後で事情聴取をしたところ、組合の中では、誰かが不起立をしなければならない状況にあったとのこと。そして、自分(当該教諭)が”人柱”にならざるを得なかったのだ、と告白した。
彼は学校運営にとても協力的で、全員が”敵”のような職場の中にあって、唯一信頼してきた教員だった。その彼が不起立を行ったことがとてもショックでならなかった。
余談ではあるが、当然のことながら、校長との飲み会は、都教委とのやり取りや報告書の作成などで、吹っ飛んでしまった。