殊に架名国島で殺してしまえば誰もOSのメンバーが殺したとは思わないだろう。しかし、若宮は正直に教えた。
「おいおい、どうもこの辺りが怪しいぞ!」
「ゆっくり傷つけないように手で掘り出せ!」
そして、押坂の死体は白骨化された状態で発見された。
その白骨死体は肋骨にヒビがあり、刺殺の可能性が大きいと推測された。若宮は自分が一人で大木をナイフで刺したと言ったが、そのナイフはどこにもなかった。若宮は誰かをかばっているのだろうか?
その日、一度もエアリーを使わなかった。しかし遺体はちゃんと発見された。省吾はそんな自分を褒めたかった。やっと刑事らしい仕事をしたと思った。
――刑事……辞めるのをやめようかな?
省吾はアパートに帰って森川の「ブラインドフェスタ」チケットの購入方法を検索してみた。省吾は幸子に母の日も誕生日もいつも何も渡していなかった。今度こそは母の日にプレゼントをしようとチケット取得に力を入れてみた。
――倍率高いよな。
何枚も申し込んでみればどれかしら当たるかもしれない。しかし、エアリーの支払いもあるし、チケット代は馬鹿にならない。それでも四人分申し込んでみることにした。その時紀香からのライン。
「明日会いたいの。仕事終わったら一緒に飲みに行こう!」
久しぶりだった。省吾は紀香に仕事を辞めることを言っていない。若宮から聞いたのか?
「俺も話があるんだ。明日話す」
それだけだった。省吾の紀香への思いはもう冷めていた。嫌いになったわけではない。それよりも自分の夢を叶えたい気持ちの方が強かったのだ。