すぐに医師と看護師さんが寝台に私を寝かせてくれた。3度目の検査の間、ほんの1時間前は自力で車椅子から寝台に乗り移ることができたのに、手足が衰えていく驚くべき速さを感じていた。私の体の中でいったい何が起きているのか、ゆっくり考える暇はなかった。迎えに来たベッドに私は寝たまま、エレベーターで最上階へ運ばれた。

「病院の最上階は重症患者さんがいるらしいよ」

昔、母が言っていたのを思い出した。この時は呼吸も苦しくはなく、意識も鮮明で話すこともできた。

入院手続きを済ませた報告をして、夫が帰っていった。ベッドの周りのカーテンを引き、薄暗い中で男性の介護士さんが身支度を整えてくれる。

「男ですみませんね」

そう言いながら、私を着替えさせおむつをする。ぶよぶよの体を見せられる介護士さんのほうが気の毒だ。それよりも、おむつをした上に尿管にチューブを入れたことの衝撃は大きい。おむつも初めてなら、尿管にチューブを入れるのも初めてだ。チューブを入れた時の何とも言えない感覚に、私は身もだえした。

しばらくしたらこの気持ち悪さは消えたが、「まだ60代で、おむつは早いよねぇ」、私の頭の中で、この言葉が繰り返し聞こえていた。私が覚えているのはここまでだ。

ICUへ

体温37・5℃  血圧130/83

握力0㎏

頭部前屈筋4

三角筋2/2

上腕二頭筋4

膀胱障害有

腱反射消失神経伝動性検査は軸索障害があり、F波消失のためGBS(ギランバレー症候群)と判断重症のため初期治療は血漿交換法(血液中の血漿だけを健常な方の血漿と交換)を選択

被痰困難による呼吸困難が見られる