俳句・短歌 短歌 故郷 2022.06.26 歌集「星あかり」より三首 歌集 星あかり 【第115回】 上條 草雨 50代のある日気がついた。目に映るものはどれも故郷を重ねて見ていたことに。 そう思うと途端に心が軽くなり、何ものにも縛られない自由な歌が生まれてきた。 たとえ暮らす土地が東京から中国・無錫へと移り変わり、刻々と過ぎゆく時間に日々追い立てられたとしても、温かい友人と美しい自然への憧憬の気持ちを自由に歌うことは少しも変わらない。 6年間毎日感謝の念を捧げながら、詠み続けた心のスケッチ集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 散髪で頭の形考える 親から受けた色んな形 公園の樹々の波間に蝉々が 合唱している生命賛歌 逃げもせず飛びもしないで近づいた 若き雀の愛らしさ哉
小説 『眠れる森の復讐鬼』 【新連載】 春山 大樹 赤信号無視の乗用車が、トラックに衝突し大破した。シートベルトをしていなかった重症の若者が搬送された、その病院の医師は… けたたましいサイレンの音が鳴り響いている。そしてその音は嫌な気持ちになる程どんどん大きくなってきて、すぐそこまでやってきたと思ったら突然聞こえなくなった。ERの自動ドアが開いて救急車から下ろしたストレッチャーを白いヘルメットと青いコートを身に着けた二人の救急隊員が中に運び入れた。ストレッチャーの上で、頸椎カラーを装着され、オレンジ色のクッションで頭部をバックボードに固定された若い男が苦しそうに冷…
小説 『ブッダの微笑み』 【最終回】 黒坂 和雄 血便を垂れ流しながら進んだ。だが力尽き、「沙羅双樹の間に、頭を北に向けて床を用意しておくれ。私は疲れた」と… 晩年、ゴータマはほとんどアーナンダ一人を連れて遍歴していたようである。権威はあったが、教団を率いている様子はなかったという。ゴータマの最後の旅はラージャガハの鷲の峰から始まった。幻影が中田に入ってくる。幻影がゴータマの言葉となって語り始める。「〈アーナンダよ、カピラヴァットゥへ連れていっておくれ。わたくしにもう一度雪山を見せておくれ。わたくしの母が父と過ごしたところだ。わたくしは故郷で我がシャカ…