俳句・短歌 短歌 故郷 2022.06.26 歌集「星あかり」より三首 歌集 星あかり 【第115回】 上條 草雨 50代のある日気がついた。目に映るものはどれも故郷を重ねて見ていたことに。 そう思うと途端に心が軽くなり、何ものにも縛られない自由な歌が生まれてきた。 たとえ暮らす土地が東京から中国・無錫へと移り変わり、刻々と過ぎゆく時間に日々追い立てられたとしても、温かい友人と美しい自然への憧憬の気持ちを自由に歌うことは少しも変わらない。 6年間毎日感謝の念を捧げながら、詠み続けた心のスケッチ集を連載でお届けします。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 散髪で頭の形考える 親から受けた色んな形 公園の樹々の波間に蝉々が 合唱している生命賛歌 逃げもせず飛びもしないで近づいた 若き雀の愛らしさ哉
小説 『春のピエタ』 【第7回】 村田 歩 刑務所で、お袋と13年ぶりに対面…こんなに小さな女だったか―。あの頃、生活が苦しく、いつも歯を食いしばっていたお袋は… 俺たちは婆さんより早く呼ばれた。刑務官に案内されているとき、初めて親父が落ち着かない様子を見せた。首から下は先を行く刑務官に素直に従っているのに、首から上はまるで道を見失ったかのようにあたりをきょろきょろ見回している。勝手が違う、といった顔だ。俺は急に不安になった。悪い想像が浮かぶ。たとえばお袋は急病で、敷地内の医務室のベッドで身動きできなくなっているのではないか。だからいつもの面会室で会うこと…
小説 『新西行物語』 【第10回】 福田 玲子 崇徳天皇の母・待賢門院璋子。母子といえども、たやすくは会えない。彼を見て、なかなか会えない帝を思い出していたのかもしれない 佐藤家では、義清(のりきよ)を主家の閑院流(かんいんりゅう)藤原氏である徳大寺家(とくだいじけ)の家人(けにん)として仕えさせて、朝廷に仕官するのに必要な礼儀作法や教養を身につけさせようとしたのである。まだ徳大寺家(とくだいじけ)に仕え始めたばかりのある日、義清(のりきよ)は左大臣徳大寺(とくだいじ)実能(さねよし)に呼ばれた。「義清(のりきよ)、これを待賢門院(たいけんもんいん)に届けてくれ」…