【前回の記事を読む】窓ガラスが全くない車⁉ 日本の常識を覆す親切なトルコ人たち
民家に泊めてもらってシリアンダンス トルコ(セルベガーゾ)→シリア(バブ・エル・ハム)
一九七四年一月二六日
南米でも街を歩くと人々が振り返って見たり、子供たちが寄ってきたりしたが、こんなに多くの子供たちに囲まれたことはなかった。ここは小さな村で、外国人がほとんど立ち寄らず珍しいのだろう。だから、先ほどの店で缶詰とパンを買ったものの、手に持ったままで食べる場所に困ってしまった。とにかく大勢の子供たちに囲まれて身動きできないのだ。
その時、一人の青年が来て私の家に来ないかと言ってくれたので、渡りに船とお願いする。さっき、Vと約束した四時までお邪魔させてもらうこととする。誘ってくれた彼Bの家は畑の中にある。アラブの家も日本と同じように、玄関を入った土間で靴を脱いで、一段高くなった家の中に上がる。床はコンクリートで、その上にカーペットとござを敷いているが、コンクリートを通して外気が伝わってきて床は冷たい。
家の中には家具らしいものはない。ただ、石油ストーブ、石油ランプ、布団、机、そして土間に水がめがあるだけ。周りは壁でなにもなく、着物がいくつか釘にぶら下がっている。電気・ガス・水道なしで、トイレもない。
夜になってトイレの場所を聞いたら空き缶を渡され、家の向こうの畑を指さされた。要するに、渡された空き缶に水を入れ、畑の陰で用を足せということである。夜だからいいけれど、昼間はどうするのだろう。女性はどうするのだろう。そして、シリアの冬は相当寒いので、冬の野外で水を使って用を足すのは意を決する必要があり、それが嫌で我慢していると便秘になりそうである。
家に入るとストーブに火を点け、お茶が出て食事も出してくれた。これらは隣の小さな家からお母さんらしい女性が運んでくれた。結局Bの家で一泊して昼・夜・朝と三食を食べさせてもらった。その内容は次のとおりで、すべて、隣の家から運んできた。
●昼食
・平たいパン:直径三十センチメートル、厚さ二、三ミリメートルぐらいのパン。自家製。
・チーズ:ドロッとした柔らかいもので、パンにつけて食べる。
・オリーブ油:パンにつけて食べる。
・キャベツの漬物:まるで日本の漬物にそっくり。しかし、一枚のままなので、ちぎって食べる。
・かぶと唐辛子の漬物:唐辛子はやはり辛い。エジプトと同じ。
・オリーブ:普通のオリーブのピクルス。
・アプリコットジャム:とても甘い。シロップをパンにつけて食べる。
・果実の砂糖漬け:これも甘い。
・チャイ
●夕食
・平たいパン
・ごはん:油で炒め、胡椒を振りかけている。直径五十センチメートルくらいの平たい容器(洗面器みたい)に入っていて、みんなでスプーンで食べる。
・ミルク:どんぶりのようなものに入っており、同じ器からみなでスプーンで飲む。
・オリーブ、かぶ、唐辛子の漬物。
・チャイ
●朝食
・平たいパン
・オリーブのピクルス
・スープ:ごはんと野菜が入っている。唐辛子を振りかけて食べる。直径五十センチメートルくらいの容器に入っていて、みなでスプーンで食べる。