ようやく髙取城を落とし、儂が芥川山城に参上した時には、義興様はもうすっかりやつれてしまわれて、御顔の色も悪く、一年前の教興寺畷で繰り広げた実休の弔い合戦の時の雄姿を、今では想像することができないほどの有り様であった。

「道三殿、義興様はいかなる病なのか」

「血が弱ってしまわれている。一度傷口から血を流すと止まらない。血の病です」

と、儂の問いに名医が答えた。
「どうすれば治せる」

「血を洗浄するか血を入れ替えるかでしょうが、そんなことができるはずもなく、なかなか難しい病です」

医師が治療を施す横で、控えて見守ることしかできない儂は、祇園社で平癒祈祷をするなどして、御容態が快方に向かわれるよう祈り続けた。

だが甲斐もなく、まだ残暑の厳しい初秋の八月廿(にじゅう)五日、芥川山城の一室で、義興様は廿(にじゅう)二年という短い生涯を閉じた。