俳句・短歌 短歌 2022.06.10 短歌集「茜色の空」より三首 茜色の空 【第11回】 有波 次郎長 人間の美しさとみにくさ、コロナ禍での生活、忘れられないあの女性……。 ささやかな日常を詠った誠意ある作品、幅広く物事を取り上げ、「今」を鮮烈に詠いあげた短歌集。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 物憂げに二度と結婚せぬという君の手深く黒髪をすく *こういう時の女性は魅力的。 自分という人に初めて会えたよな気がする君を抱きしめた夜 *こんな瞬間、確かにあった。 別れても何度も何度も振り返る愛しいからと言う君を抱く
エッセイ 『59才 失くした物と得た物』 【新連載】 有村 月 結婚してから35年、「愛」はなくとも「情」は生まれる ダンナが死んだ―まさかの現実。自覚はなかったが、この時から私の「おひとりさま」は始まろうとしていたようだ。たしかにダンナは肝臓の数値が悪いと1ヵ月半入院したものの退院、体力も少しずつ戻りはじめ還暦祝の1泊旅行もし、そのたった1週間後にはこの世からいなくなるなんて、頭の中のすみっこにさえなかった事。よくいう野球の九回裏2アウトからの逆転満塁ホームラン的な。その1年半前、最愛の母が「くも膜下出血」で…
小説 『猫の雨傘と僕のいる場所』 【第2回】 倉澤 兎 職場の人間関係(特に女性)に疲れ、四年ほど勤めた会社に辞表を提出した 紀伊半島を巡る「紀勢本線」が全線開通したのは意外と遅い。昭和三十八年で、僕が生まれて二年後のことである。小学生の頃には、「DD51」と呼ばれるディーゼル機関車が客車両を牽引していた。この機関車が牽引する青や茶色の貨物車両の長い重連が、山間(やまあい)の木々の間を縫って敷設された路線の上を走行していく。その姿を小学校の二階にある図書室の窓から眺めることができた。「佑君。また汽車眺めているん。どこが…