俳句・短歌 短歌 2022.06.05 短歌集「茜色の空」より三首 茜色の空 【第10回】 有波 次郎長 人間の美しさとみにくさ、コロナ禍での生活、忘れられないあの女性……。 ささやかな日常を詠った誠意ある作品、幅広く物事を取り上げ、「今」を鮮烈に詠いあげた短歌集。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 耳遠く会話が「えっ?」「えっ?」と途切れるもドローの試合は打ち合い続く *お互い様か。 全身を鼓膜さながら聴いている聴いてないふりして聴いている *カフェの楽しみの一つ。 寂しいと言った女を慰めて帰したあとの我の寂しさ
エッセイ 『59才 失くした物と得た物』 【新連載】 有村 月 結婚してから35年、「愛」はなくとも「情」は生まれる ダンナが死んだ―まさかの現実。自覚はなかったが、この時から私の「おひとりさま」は始まろうとしていたようだ。たしかにダンナは肝臓の数値が悪いと1ヵ月半入院したものの退院、体力も少しずつ戻りはじめ還暦祝の1泊旅行もし、そのたった1週間後にはこの世からいなくなるなんて、頭の中のすみっこにさえなかった事。よくいう野球の九回裏2アウトからの逆転満塁ホームラン的な。その1年半前、最愛の母が「くも膜下出血」で…
小説 『野球の子』 【第5回】 大藤 崇 父と僕を捨て、好きな男と出て行ってしまった母。「帰ってきてほしい」と伝えたくて… 僕は高校に入学した。入学と同時に、野球部に入部、甲子園大会で五連覇を達成した。ついでに国体も神宮大会も優勝。その年のドラフトでビッグ・キャッツから一位指名を受けて、プロ野球選手になった。あらゆるタイトルを独り占めし、ビッグ・キャッツを何度も日本一にした。そして、海を渡り、ニューヨーカーズに入団、世界一となった。というのは真っ赤な嘘で、本当なのは高校に入学した、ということだけだ。中学生まであんなに…