俳句・短歌 短歌 2022.05.31 短歌集「茜色の空」より三首 茜色の空 【第9回】 有波 次郎長 人間の美しさとみにくさ、コロナ禍での生活、忘れられないあの女性……。 ささやかな日常を詠った誠意ある作品、幅広く物事を取り上げ、「今」を鮮烈に詠いあげた短歌集。 この記事の連載一覧 最初 前回の記事へ 次回の記事へ 最新 死ぬことも左程大事なことでなし他人事としてシニアは語る ただ一人家でテレビを見るよりも施設の人の気配を愛す 古希越えのシニアの会話久々に楽しく聴いて耳に染み入る
小説 『恋愛配達』 【第15回】 氷満 圭一郎 配達票にサインすると、彼女は思案するように僕の顔を見つめ「じゃあ寄ってく?」と… 「本業は酒屋で、宅配便はバイトです。ところでさ」ぼくはたまらず差し挟まずにはいられない。「さっきからなんなの、どっち、どっちって?」「だってあなた、ドッチ君だもん」「何、ドッチ君て?」すると瞳子さんは、ぼくの胸に付いている名札を指差した。これは配達者が何者であるのか知らせるために、運送会社から貸与されているものだ。ぼくの名前は以前病室で宴会を開いた時に教えていたはずだが、漢字までは教えていない。…
小説 『縁 或る武家のものがたり』 【新連載】 伊藤 真康 浪人となった伊藤家は一家離散の憂き目に遭い、父と息子はただ二人、行く当てもなく… この物語は、陸奥(みちのく)の片田舎から現れた、全く無名の武家が記した、戦国から明治までの八世代・二百八十年の軌跡である。この武家が太閤・豊臣秀吉の治世時、奥州の雄・伊達家に仕官するところから、物語は始まる。或る時は歴史の荒波に激しくもまれ、また或る時は歴史を変える大事件に関わりながら、家の栄華を極め、やがて厳しい現実に苦悩し、武家の時代が黄昏時を迎えるとともに、彼らは露と消えていった。歴史は勝…