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国田克美という女
七月になり、いよいよ合宿研修会が近づいてくると、学生の合宿実行委員会によるスケジュールが完成し、国田に書面で届けられ、許可を得た。学校を午後二時に出発し、三時にキャンプ場到着。学生百十四名と教職員・事務員六名の合わせて総勢百二十名の研修会である。
学校出発時より、学生たちは興奮状態で、若い女子学生のわいわいがやがやの喧騒は近所迷惑であったに違いない。三台のバスに分乗し、世羅西町までの道中に実行委員より事前に配布されていた班編成や夕食・朝食の予定表などの資料をもとに簡単な説明があった。夕食のメニューはキャンプの定番でカレーライス、朝食は和食となっている。キャンプ場であることから、施設の調理器具を使用し、施設が用意した食材で自炊する。豪華な食事をしようとすればバーベキューも可能であるが、費用の面を考えて、夕食はカレーライスとなったのである。
各班は六名が一組となり二十班が編成された。バンガローは二十棟あり、丁度施設は貸切り状態となり、世羅台地の山奥のため、他人と接する機会は全くない。
バスがキャンプ場に到着して一般的注意事項の説明が専任教員よりあり、事故防止のため特に施設外へは絶対に出ないように指示された。丁度その頃、久船副学校長が自家用車で到着し、学生に挨拶をすることになった。久船は村山学校長に「お前が行ってやれ」と言われ、乗り気ではなかったが、やむを得ず引き受けたのであった。久船は挨拶後、往診があるためすぐに帰った。
その後、各班はバンガローで午後四時より自己紹介と親睦を深めるために三十分のミーティングが予定されていた。内容については各班に任せて、自主的運営にしていた。その後食材を用いて午後七時までに夕食を終えることになっている。炊事器具を洗い、整理整頓して午後七時よりキャンプファイヤーが行われた。全員が火を囲み、歌や踊りに興じてお祭り騒ぎの状態となった。なにしろ、世羅台地の山林の中で、人里離れており、いくら大声で騒いでも全く迷惑にはならない。迷惑なのは野鳥やイノシシ、タヌキの類である。
百二十人が二重の輪になれば、壮大なキャンプファイヤーと言えども、大きな輪のため遠くにいる人たちは顔を視認しにくい状態である。学生の司会者はマイクで行事を進めボリュームを上げて、次々に出し物を求めて楽しい演芸会のようであった。
この夜の学生たちは、日頃の教室内の顔付きとは異なり、全く別人のように燥ぎ、教職員たちは若者たちのエネルギーに舌を巻いた。また、立派な胸を持っている学生でも素っぴんのためか艶かしさはなく凡庸な女に見えた。