「お前もそう思うか、そうなんだよなー、銅鏡以外に、普通は祭祀に使ったのかよくわかんない物が、ごちゃごちゃあったりするもんだがな。須恵器も土師器も木器すらないし、武器の欠片もない、女王の墓とはいえ、刀子とうす位の小型武器があってもいいんだが……」

「そうだよね。大分県の築山つきやま古墳にあった説明パネルに、女性の人骨とともに大量の武器が出土したことが書いてあったような記憶があるんだけど、勘違いかな?」

明日美がさらに首を傾げる。

「明日美の記憶には間違いはないんだが、性別がわかるような人骨の出土例が極めて少ないせいと、築造の時期や地域差があったりして一概には言えないのが本当のところなんだよ。ただしこの墓は特別だ、それらと比較すること自体が間違っているのかもしれない。あとでそのわけを聞いてみよう。それに石棺が小さいせいなのか、とってもシンプルなんだ。ほかの多くの柩がベンガラや水銀朱で赤に染まってしまっているが、これはそういうこともない。美しい、そして洗練されている、センスがいいんだ」

これまでに会話を交わしていた女王の遺体を目の前にして楽しげに話している。何かしら違和感があるが考古学談議は終わりそうにない。