【前回の記事を読む】金庫にある銅鏡に父は…「いつの日か女王に呼ばれる時がくる」
第三章【判明】
作業中も質問が絶えることはなかった。
「ここには埴輪がないわね、それと祭祀が行われたと言われている造出しもないわ」
「埴輪は祠の周りにあったようだ。祠の修理をしていた時に偶然、特殊器台形埴輪の破片を見つけたんだ。祭祀は地上で行われていたんだろう」
「造出しがないことと特殊器台形埴輪とこのバチ型の持つ意味とは、古墳時代初期の築造ということになるよね」
「断定はできないがその可能性は高いな」
佳津彦はツルハシを振り下して答えた。
「私の推測によると主体部の柩は直葬の箱型石棺ね。それもそう深くはないはずよ。だってすでにここは地下だし、女王様の守護神が常に守ってたんだから」
両手で礫石を放りながら明日美は楽しげに話した。
「そうか、そうだな、さすがに私の娘だ」
誰が見ているわけでもなく親バカを承知で満面の笑みがこぼれている。
「女王様静かになっちゃったね。どんな人なのかなぁ、早く会いたいなぁ」
「今は静かに私たちが来るのを待っているんだ」
そんな談議をしながらの作業でも、もはや墳丘は50センチメートルほど掘り下げられ、佳津彦たちのいる主体部の周りは、明日美の身長と同じ位のすり鉢状となっていた。ほどなくして、『ガキーン……』ツルハシの先が何かを捉えた、近辺を探ってみると四角い石版であることがわかる。明日美の推測通り、柩は浅いところにあったのだ。
「きた、きたぞ。柩の蓋だ!」
佳津彦は歓喜の声をあげ、すり鉢状になった礫石の斜面をよじ登り背負子に向かい、中から折り畳み式のスコップと箒を持って戻ってきた。