それにもかかわらず、2016年1月にはインドネシアでテロにより民間人が殺され、3月にはベルギーの首都ブリュッセルの地下鉄駅と郊外の空港で自爆テロが相次ぐ。この事件で32人が死亡し340人が負傷したけれど、逮捕された容疑者には、昨年パリのテロ実行犯として指名手配されたメンバーも含まれていたという。

同年7月フランス南部のニースで、12月にはドイツのベルリンで、それぞれにトラックの突っ込みによる死亡者を出したけれど、この件についてはブリュッセルのときと同じ過激派組織「イスラム国」が犯行の声明を出し合っている。

2017年1月にはトルコ・イスタンブールで銃乱射事件があり100名以上も殺害され、イラクの首都バグダッドでは前年末から今春にかけて、自爆テロなど連日のようにあって多数の死亡・負傷者を出し、3月から6月までは英国で国会議事堂・コンサート会場およびロンドン橋でテロリストたちによる惨劇が行われ、10月には米ラスベガスの乱射で58名が殺害された。

さらに、2018年2月には米フロリダ州の高校生17名が射殺され、5月パリのオペラ座近くで5名の死傷者を出し、10月米ペンシルベニアの教会堂で11名が銃撃されて死亡、11月にはロサンゼルス郊外でも12名が殺され、2019年3月にもニュージーランドの礼拝堂で執拗な銃乱射事件が起こり49名を死亡させている。

そして、それらの間にも2011年3月に起きた反政府デモが発端のシリア紛争はロシアやイランが政府側を、欧米諸国やトルコ、アラブ諸国は反対派を支援し、世界中で間接的な戦争を続行していて、7年目には死者が40万人、難民は500万人を超えており、アフリカ各地においても内戦とテロが頻繁に発生しているのである。

また、2014年2月からクリミア半島(クリミア自治共和国)とウクライナ東部ドンパ地方で発生した騒乱は、ウクライナ政府軍と親口派武装勢力やロシア連邦政府・軍との紛争になり、ウクライナ側戦死者約2900名ロシア側戦死者5500~8000名を出している。

同年7月から起こったパレスチナのガザ地区の大規模戦闘は一時停戦と戦闘再開を繰り返し、イスラエル軍に破壊された全壊建物は約1万1千戸に及ぶ。5年後になっても住民は再建の資金不足に悩み、小競り合いの戦闘は絶え間なく、空爆の度に人々は逃げ惑い、恐るべき失業率に疲弊し、家族を失って絶望の日々を送っている。

2021年2月に起きたミャンマー抗議デモは、4月25日時点で死者が少なくても751名と見られている。これらは領土問題や宗教的軋轢あつれきもあるが、それぞれの国に政治的腐敗・独善や経済的差別があり、大勢の貧困者を出していることにも原因がある(注4)。

それ故に、「テロとの戦いが優先課題」と確認したり「各国の連携と決意」を表明しているだけではなく、まず「世界の貧困」を解決していくべきであろう。


(注4)貧困社会は犯罪を多発させテロの温床ともなっている。