兄の死は、壮絶すぎて、語れるものではない。「生きていたい」と言っていた。「もう少しこの目でこの世の中を見ていたい」と言っていた。「生きるためなら、何でもする」と言った兄。自分には既にそんな素敵な発想はなかった。末期のがんの痛みに市販薬のような痛み止めを服用し……そんなことってあるのか。死人になろうとしている者は、もうどうでもいいのかと思ったら、非常に悲しかった。 最期の入院のときに「兄を痛ませな…
[連載]生人
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エッセイ『生人』【最終回】碧木 文
「生きるためなら、何でもする」と言った兄。彼に明日はこなかった…
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エッセイ『生人』【第8回】碧木 文
自分で履いた「赤い靴」である介護。たとえどれだけ過酷でも…。
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エッセイ『生人』【第7回】碧木 文
毎日病院に向かうのは、縛られている父の腕を自由にするため…。過酷な介護の体験
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エッセイ『生人』【第6回】碧木 文
愛と家庭の価値についての一考察。家庭以外に愛を学ぶ場所はないのである
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エッセイ『生人』【第5回】碧木 文
現代の子供は「すごい勢いで苦しい」…自己確立の難しい時代
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エッセイ『生人』【第4回】碧木 文
祖父の穏やかな死…初めて見た「生人が死人になってしまった瞬間」
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エッセイ『生人』【第3回】碧木 文
「お前は神を頼らなければ生きていけないのか!」父の愛ある一喝に性根を叩き直されて
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エッセイ『生人』【第2回】碧木 文
「この国の多くの政治家がある宗教団体に取り込まれていたとは…」
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エッセイ『生人』【新連載】碧木 文
現代社会に切れ込みを入れるエッセイ「生きているというのは実に過酷だ」