八わたしはこの日、橋巡りをしようと楽しみにしていたのが、どうしようもない不安と恐れに打ちのめされながら独り歩くことになったのです。このときすでに午後五時を回っていました。時間は混乱のさなかにまたたく間に過ぎていたのです。この道筋は原爆が落ちた場所からは山の陰にあたるため爆風による被害は上流に行くほど少なくなっていきました。わたしと同様にこの道を歩いて行く人がおりました。当初わたしは夜には城山に着…
[連載]天空橋を渡って
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小説『天空橋を渡って』【最終回】松井 左千彦
「家を早く出ていなければ…」慄然とする運命的な出来事のつらなり
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小説『天空橋を渡って』【第10回】松井 左千彦
長崎を襲った惨劇。絶望的とは知りながら、少女は家族を救出に向かう
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小説『天空橋を渡って』【第9回】松井 左千彦
「家族全員が集まる最後の時となった」…原爆が落ちたあの日
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小説『天空橋を渡って』【第8回】松井 左千彦
「どんなことがあっても、八月九日午前十一時半に、ここに来ます」
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小説『天空橋を渡って』【第7回】松井 左千彦
「背広を着て、ネクタイをしたドロボー」の真の姿に驚愕!
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小説『天空橋を渡って』【第6回】松井 左千彦
消費者被害に遺産相続…困難に直面する者の財産や権利を守る「後見契約」
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小説『天空橋を渡って』【第5回】松井 左千彦
【小説】この3人こそ「天から与えられた、わたしの最初の家族」
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小説『天空橋を渡って』【第4回】松井 左千彦
【小説】家族でも友人でもない連帯…社会常識からはみだした奇妙な関係
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小説『天空橋を渡って』【第3回】松井 左千彦
「葬儀も、読経も、花束も、何も、いりません」夫に先立たれた女性が後見人に申し出た“願い”とは
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小説『天空橋を渡って』【第2回】松井 左千彦
天涯孤独の婦人が「まだ二度しか会っていない男」に依頼したこと
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小説『天空橋を渡って』【新連載】松井 左千彦
「橋を渡った先に住む女性に会う」それが彼の仕事だった…